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トロールズ ミュージック★パワーのumisodachiのレビュー・感想・評価

3.7



ミュージカルアニメ映画。第二弾らしい。

歌とハグが大好きな妖精トロールズが暮らすポップ村では、女王ポピーがみんなに愛されて明るく過ごしていた。しかし、外の世界ではロック村の女王バーブが他の村を侵略しようとしていた。かつてのひとつの王国が分裂したという歴史自体を初めて知ったポピーは、また皆で仲良くできるはずだとバーブに会いに行くのだが……。

トロールズ初体験だったのだが、大変おもしろかった。ポップ、ロック、クラシック、テクノ、カントリー、ファンクという6つの村に分裂したかつての王国の再統一を企てるロック村の女王バーブ……ということで、わかりやすく覇権争いや侵略がストーリーの根幹を成している。めっちゃ政治的。

もちろん見どころはそれぞれの村のトロールたちが歌い踊る音楽で、見ているだけで楽しい華やかな作品に仕上がっている。当然子ども向けなのだが、ストーリーに組み込まれたテーマが非常に緻密でちょっと驚いた。

ポップ村は分裂した種族の中でもど真ん中の場所に位置していて、どうやらずっと中心的な影響力を持ち続けて居たらしい。無知だったとはいえポピーはナチュラルに「自分たちが一番」だと思っていて、他の村のトロールたちに「素晴らしい音楽を教えてあげよう」とする。とっても帝国主義的発想であり、しかも無意識なのがさらに事態を悪化させてしまう。ポップ村の中にも色々な出自や考え方のキャラがいるのに、ポピーは持ち前の行動力と極端なポジティブさで聞く耳を持つことができない。他の村のこととなるとなおさらで、彼らの思考回路を想像することすらできないのだ。

ファンク村に伝わる歴史とポップ村に伝わる歴史の相違点に気づいたとき、ファンク村の住民はポピーに「勝った方は自分たちの都合が良いように歴史を書き換えるからね」と言う。子ども向けのアニメで歴史修正主義に言及しているのだ。他にも弱みを握られて強大な村に搾取される少数民族など、戦争や歴史に関するさまざまな要素をストーリーに組み入れている。

というわけで、ポップ村は非常にアメリカ的であり、ポピーはいわゆるアメリカ的な主人公なのだが、その「アメリカ的」な部分を積極的に批判していくこういった姿勢はすごいと思う。悪意のない上から目線、抑圧された人々に気づきもしない鈍感さ、ポジティブと行動力の押し売りなどのポピーの欠点をしっかりと見せ、歴史を正しく認識して自分たちの無知や無自覚を反省し、広い視野を持って全員の違いを違いのまま受け入れ、全体の幸福を考えなければいけないという明確なメッセージを展開していく。(最後は結局ポピーが中心になるわけだけど……笑)

と、ここまで小難しく解釈してしまったが、基本的には子どもたちがノリノリで楽しめるミュージックアニメ。キャラクターも魅力的だし、吹替声優もビックリするくらいみんな上手だった。親子鑑賞におすすめ!





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