チェックメイト

ハミングバード・プロジェクト 0.001 秒の男たちのチェックメイトのレビュー・感想・評価

4.0
最先端の株取引をするために回線ケーブルを直線で敷設するという、所詮は泥臭いテクノロジーによるインフラで成り立つというのがパラドックス的で面白い。
オフィス勤めのヴィンセントが山奥で掘削機と奮闘。
小柴教授がノーベル賞を受賞したあのニュートリノ観測のために飛騨の山奥深く地下1,000mに電球を一万個以上も並べた水槽を建設するのに相通じるところある。

また、天才的頭脳のアントンがさんざん理論を駆使してもなかなか短縮出来ない処理時間を配線機器による時間遅れに気付いて機器を能力いっぱいを使うことで台数を減らして処理時間を短縮するなど結局は意外と原始的な方法によって達成する所なんかも意外とあるあるな話ではある。だからここはアントンならではの頭脳が発揮された結果ではないのだ。
ただ時間との戦いを強行するヴィンセントが自身の持ち時間が病魔によってなくなり生を再認識するところは(どこまでが実話か不明だが)フィクションならあざといと思うが実際がそうだったとすると現実とは皮肉なものだ。

アントンとヴィンセントが本当に仲が良いのかわからなかったがアントンがヴィンセントに間違えられても否定しないでいて万一にそなえてあった起死回生策による女社長との対決で優位になりヴィンセントには近づくなと要求したりヴィンセントもアントンの逮捕を知ってアントンヘの心配もまたしかりで二人の関係が打算的でないところがキュンときた。

にしても世の中には頭がいい人がいるなぁという思いと、せっかくの苦労もたった一つのブレークスルーであっという間の逆転とは無慈悲だなぁという思いだ。

色々な意味でアイロニーに満ちていて面白かった。
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