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つつんで、ひらいてのkoyaのレビュー・感想・評価

つつんで、ひらいて(2019年製作の映画)
4.0
第20回東京フィルメックスにて鑑賞。
このドキュメンタリーは本好きな人にはたまりません。
今まで何気なく手にとっていた本がどういう過程で「飾られていくのか」を追います。

1万5千冊以上の本の装丁を手掛けた第一人者、菊地信義氏を追ったドキュメンタリー。
スタイルは絵やイラストを使わず、活字の書体や大きさや配置でもって本を装丁するスタイル。

映画冒頭、紙をくしゃくしゃにする所から始まります。
印字した本のタイトルをわざとくしゃくしゃにしてコピーをとり、文字をかすれさせる作業。

その他、1㎜のこだわりの世界、紙への固執・・・美しい本を作りあげる職人的な存在。

監督のお父さんが本の装丁家だったそうで、家に菊地さんの装丁した本があったことから、興味を持ち、取材を申し込んだ時、最初は断られたそうです。

しかし2度目の時は逆に乗り気で色々なアイディアを出してきて、途中で「引退という考えはありますか?」という問いに「いつまでたっても満足感がない。できる限りやりたい」と言い、後継者を育てながらも、まだまだ自分は現役アピールする菊地さんは、まだまだやる気まんまんです。

音楽は菊地さんが好きだというタンゴが流れ、ナレーションはありません。
今、電子書籍やデジタル化でどんどん紙媒体が減っていく中、丁寧な手作業の世界。これだけ紙に、装丁に凝っていれば本が高くなるのもやむなし、という気がします。

私としては、もちろん装丁の美しい本はいいと思うのだけれども、購入まではいかず、図書館などを利用している身なので、この映画を観て思ったのは、本というのはとてつもなく贅沢品なんだ、ということです。
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