コバチ

ドラゴンクエスト ユア・ストーリーのコバチのレビュー・感想・評価

2.8
喫茶店でパフェを注文するじゃん。
運ばれてきたパフェを柄の長いスプーンで少しづつ食べ始めるわけよ。
最初はトッピングされたホイップクリームとか果物を食べて、少し掘るとバニラアイスの層が見えてきて。果物で口の中に広がった酸味をアイスの甘味が洗い流して新しい刺激に酔いしれる。バニラアイスの下はシリアルの層が、その下にはムースがって味の変化に舌鼓を打ちながら。
次にこの喫茶店に来たらまたパフェを注文しようと心に決めて最後のチョコレートにスプーンを刺した所で
店長が現れて、俺の耳元で「パフェなんか食べたら太りますよ」って言う映画。
そんなん知っとるわ!


ここまでの幸せを返してくれ。



あらすじ:103分で名作ドラゴンクエスト5天空の花嫁を映画化する為に超高速で話が進むが、映画化にあたってアレンジがされているものの大体ゲームと同じ(最後以外は!)



感想:
1992年にスーパーファミコンソフトとして発売された『ドラゴンクエストⅤ天空の花嫁』を3Dアニメとして映画化した作品。
監督のオファーがきた山崎貴は当初乗り気ではなかったが、ある日画期的なラストシーンのアイデアを思いついてしまったために映画化となった。(これが悲劇の始まりである)

山崎貴といえば、3Dドラえもんで大ヒットをかまし3Dルパン三世も作ったピクサーに頼らずに国産3Dアニメ作るんだったら最適の監督となっている。(宇宙戦艦ヤマトを作ったり寄生獣作ったりと独自解釈でファンから顰蹙を買うことがある)

まず良い点を書こう。
日本でも実績のある3Dアニメ制作会社の白組が描く、僕らが想像していた通りのドラクエのモンスターと躍動感あふれるアクションと魔法の素晴らしさ。映像は実に素晴らしい。
シナリオはゲームの再現なのでドラクエ5を少年・少女期にプレイした人ならば、当時の事を思い出しなら「ここでパパスが…」とか「ビアンカとフローラを選ぶシーンがこのように描かれるのか」と胸を躍らせるだろう。俺は小学生の時にプレイしたので邂逅と斬新さにテンションが上がった。
103分しか上映時間がないので、テンポが早く設定がゲームと違う点に気付くと思うが。ゲームと主人公リュカの物語には大きな差異は無いので多めに観て楽しめるだろう。
ドラクエ5をプレイしたことがない人でも楽しめるようにファンタジー作品として出来上がっている事も素晴らしい。
声優には、邦画業界の悪習である俳優を起用しているが、主人公役の佐藤健を筆頭に、レベルの高いキャストで不満はない。
BGMはゲーム同様すぎやまこういちがオーケストラで壮大に奏でているので、感涙ものである。

つまり、
絵も声優も音楽も問題なく良いので、終盤になった時に「あ、みんなが言ってたアレがくる」と思った瞬間に停止ボタンを押せば楽しめる映画である。(シュタゲでバッドエンドのスタッフロール中に電話が鳴る演出の逆だね)


じゃあ、クソッタレな点を書こう。
終盤、終わり10分くらいのゴミ展開。
山崎貴が意気揚々に描いた蛇の足。まさしく蛇足である。
その世界がVRゲームだったんですよ。って展開自体はそんなに嫌いじゃない。ラスボスがコンピュータウィルスに汚染された存在ってのも、まぁVRゲームの世界なら有りだと思う。
問題は、そのコンピュータウィルスの出生と目的。
どっかの天才プログラマーが暇つぶしに作ったウィルスってなんやねん。
そこは、ゲーム内で何度も倒され続けたミルドラースの怨念が…とか、悪いクラッカーとかにすればよくない?
天才プログラマーがウィルスを作った理由も僻み根性みたいな感じで、「ゲームは虚無」って主張は観ている子供の向けて言うのも失礼だし。大人はそんなの分かって観てるわけで…。
アンチウィルスのすらりんから出たロトの剣で敵を倒して終わりって…。
突然現れたアンチウィルスプログラムのスラりんってなんだよ。

オカンが「今回のミルドラースはいつも違う」ってメタ発言した時から、ダムが決壊するような、床元が崩れ落ちるような一抹の不安がよぎったけど。
そっかの評価の急落下は凄い。

総括:
最後の最後以外は素晴らしい出来栄えなので、最後の展開が辛かった。
最後を除くと、小学生の頃にプレイしていた時は気づかなかったけど、主人公が周りから伝説の勇者と讃えられ、天空の剣が抜けず自分が伝説の勇者でない事実に落ち込み、それでも母親を救うために努力する。ブレードランナー2049の主人公みたいでかっこよかった。
世界に選ばれし者でなくても正しき道を進み続けることで、誰かの勇者になれるって話の筋は好き。
コバチ

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