コバチ

コリアタウン殺人事件のコバチのレビュー・感想・評価

コリアタウン殺人事件(2020年製作の映画)
3.5
あなたが正しいとき、過激になりすぎてはいけない。
あなたが間違っているとき、保守的になりすぎてはいけない。
ーキング牧師ー


あらすじ:
フロリダのコリアンタウンで暮らす主人公は、ある晩警察が殺人事件の処理をしているシーンを目撃してしまう。気になった主人公はハンディカメラを手に取り独自の捜査を開始する。


感想:
3月頃にアマゾンプライム(以下アマプラ)にて突如公開された謎のインディーズ映画。
アマプラでは過去の名作から、型落ちした新作映画まで謎の基準で無料公開を始めるのだが。名作でも新作でもないやっすいB級ホラー映画もたくさん公開している。
そんな夢の島の中から一部の好事家が見つけ出し、「これって作り物じゃなくてガチの映像じゃない?」と騒ぎ始め一部で話題になった映画である。(静かなブームって奴)
アマプラでは作品紹介画面で出演者や監督なんかのスタッフ情報を公開しているのだが、この映画では、「監督:わからない」「出演者:わからない」と表記されている。
誰が何のために作ったのか”わからない”という姿勢である。アマプラもそんなよくわからない映画を日本語字幕まで用意して無料公開しているなって思うが。これがアマプラの商才なのか狂気なのか見終わった今でも”わからない”ままである。

モキュメンタリー映画というジャンルがある。
ドキュメンタリーぽい手法で作られたフィクションであり、有名どころではブレアウィッチプロジェクトとか、放送禁止とか白石晃士作品とか色々ある。
自分はモキュメンタリー作品の楽しみ方というのは、如何なる奇想天外なモノであってもドキュメンタリーでありノンフィクションの事実として見始めるのが礼儀・楽しみ方だと思って視聴している。
この映画も、そうゆうスタイルで見始めたのだが…いやぁー辛い。
手ブレ満載のハンディカムの映像や要領の悪い主人公のインタビューと、本当に暇なおっさんがカメラを持って道端をウロウロするだけのドキュメンタリー映像は現実的すぎて暇になる。事件の解説や進行も悪い。

面白くなってくるのは、白髭のホームレスとの出会いからであろう。
その前から主人公の精神は少し弱っているが。
白髭ホームレスと出会い、精神を病んでいるぽい白髭ホームレスと会話をすることで互いの妄想を補完しあい相乗効果から主人公は急速に頭がおかしくなる。(これまで主人公の体と心を案じて事件から手を引くように言う人ばかりだったので、自分の考えを適当に肯定してる存在が現れたことが悪い方への後押しになったのだろう)
「事件現場の近くの車庫の中にすべての答えがある」
とんだ名探偵の誕生に、見ていた俺は言葉を失った。
彼女が帰ってくる前に全てを終わらせようと夕方に不法侵入を企てようとして通行人の多さから諦める辺りのシーンのくだらなさと無能さがすごい。
後、被害者の幽霊と会話できると思いこんで風に揺れるカーテンと喋りだす所、その後のシーンを見ると雷や雨から夕立による強風だと思うんだけど。主人公はガンギマリで下水道からエールまで送られるから「幽霊が俺に事件解決を求めている!俺はやってやるぜ!!」と意気揚々となっていて、彼女の寝静まった所で車庫に不法侵入して暗闇の中で持ち主に出会ってビビって逃げ出したら彼女がいなくなってて絶望して「全てはアイツ等の罠だったのか…」って完璧に頭おかしくなる辺りで。

俺は「この映画、フィクションだな」って確信する。

(下水道からの白髭ホームレスの応援が、主人公の幻聴なら視聴者に聞こえるわけないが、あまりに現実味がないので。一瞬「これって創作モノ?」と疑ったが)

意外と、長い間ドキュメンタリーだと思ってみていた。
YouTubeにいる頭のおかしい人の奇行動画を映画として整えたドキュメンタリー。
その後の展開はすごく雑で、彼女を探す謎の男が現れたり家の周りにいる警察官を盗撮して、「ヘリが俺を監視している」という被害妄想の中ではオーソドックスな奴をやって町中で叫んで狂人と化す。
精神が崩壊寸前となった主人公は「もうすぐ奴らに捕まるから、この動画を全部友達に送ってどっかに公開してもらうわ」と言って映像が終わる。
暗転
俺「思っていたよりもあっさり終わったな。まぁ創作だもんな。嘘っぱちだもんな」
所々が黒塗りになった免許証の画像
俺「コイツが主人公の顔ってこと?」
スタッフロールの代わりに流れる
「この映像の収益は、失踪した撮影者を探すための費用として・・・」
俺「え?これマジ?」

と、最後の最後で俺の中でこの映画に対するフィクションとノンフィクションのジャッジが揺らぎだして気持ち悪くなる。
その後、調べると。劇中に起きたコリアンタウンでの事件は2017年実際に起きた事件であり、使われた加害者と被害者の画像は本物。撮影場所も本当のコリアンタウンぽいとわかる。
また、アメリカの匿名掲示板で「この事件を追って失踪した友人からビデオテープが届いた」という書き込みがあり、その内容と映像は類似する点が多い。という情報を得る。
俺の脳みそがグワングワンと揺れて気持ち悪くなり寝る。

夢の中に韓国人のおっさんは現れず


総括
これを世界のどこかの真実として見るか、大ホラ吹きが作った物語と見るか。結局最後まで誰も答えを見つけられない形になっているのが面白かった。
創作であるならば、低予算の極致みたいな内容でここまでの映画を作るセンスというか発想が凄い。独自の世界観を持っていてソレが他者にも伝わると信じている狂人という一級クリエイターならではの仕事であると思う。

余談1
手ブレ映像が多すぎるので、大画面で見るか字幕に注視する必要がある


余談2
彼女の友達に最初から落書きの画像見せれば良いのに、なんで現場に動向させる主人公。
そして翻訳を頼んだのに全文翻訳せずに意訳する彼女の友達。


余談3
急に亡くなった母親の話をする主人公と、その伏線を即効で回収する占いババア
占い婆「あんた幼い頃に誰かを亡くしたね(占い師の常套句)」
主人公「母親の話をする前に言い当てるとかコイツ本物かよ!!!」

俺「バカばっかり(ホシノ・ルリリスペクト)」
コバチ

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