コバチ

スケアリーストーリーズ 怖い本のコバチのレビュー・感想・評価

2.8
物語は人を癒やし、人を傷つける
繰り返し語られると、それは現実になる
我々を形作るそんなチカラが物語にある



あらすじ:1960年代のアメリカの田舎町。ステラ、オーギー、チャックの三人はハロウィンの夜に知り合ったレイモンと一緒に街で噂の幽霊屋敷に探検に出かける。そこで見つけた多くの怪談の書かれた本を作家志望のステラが持ち帰ってしまう。本に新しい怪談が書かれるたびに誰かが失踪することに気づいたステラ達は…。


感想:
ITのリメイクやストレンジジャーシングスのヒットによって、古き良きアメリカを舞台にしたホラー作品つくろうぜブームによって生まれた作品。
日本の一部から多大な愛情と狂気を得ているギレルモ・デル・トロが制作に関わっていて、出てくるクリーチャーの奇妙さなんかは他のホラー作品より一歩抜きん出ている。(赤い部屋のあのデブとか、アクションと爆音と血しぶきで驚かすアメリカンホラー全否定で不気味すぎるやろ…)

幽霊屋敷で手に入れた本に怪談が書かれるとその通りに友達が死んでいくので、ソレを止めようとステラ達が四苦八苦する話。というわかりやすい内容なんだけど。こうゆうジュブナイルホラー映画って、恐怖と同時に友情や淡い恋愛、これぞ青春やん。を描くのが世の常というか、一本で二度美味しい!的な作りなのだが。今作はホラーに全振りしていてソウユウのが無い。

映画の面白いと思ったポイントは、怪談は体験する人とリンクしていて、その人が恐怖を覚えた話が実現するって所。
「その話なら、昔きいたぜ」とか「夢の中で赤い部屋にいたんだ」「私は蜘蛛が嫌い」と、当人が抱いている恐怖が目の前に現れる。
それは幽霊屋敷のサラが兄貴達に虚偽を求められて拷問の末に「あなたの望む話を語ってあげる」と相手の望む嘘(物語)を作り始めた事と繋がっていて。作られた嘘を誰もが真実だと思って非業のうちに亡くなったサラが、今度は誰かが作った嘘(怪談)を現実にすることで本を読んだ人達を殺していくのは良かった。

終盤でステラが新聞や病院の診断記録から、サラの無実に気づいて幽霊屋敷でサラをベタ褒めする物語を書くと、サラは大満足して成仏するのだが。それが本当の真実だったのか分からないのも面白いと思った。新聞も診断記録、過去のビジョンを見せられようとそれらは全て誰かの主観が入ったものであり事実であるが真実である可能性はない。本当は、噂通りにサラが屋敷に来た子供を殺しまくる異常者だったのかもしれない。
サラはステラが真実を書くと言ったから満足したのではなく、自分の望む物語を書いたから満足したのだとしたら。
物語(怪談)をテーマにした映画としては実にきれいな終わり方であったと思う。


余談1
序盤のホラーポイントが、爆音で驚かす演出ばかりで耳とご近所の視線が辛かったぞ

余談2
チャック「俺レッドルーム行くの怖い」
ステラ「じゃあ、ここで待ってて」
チャック「OK」
即、その場から逃げ出すチャック
俺「あのさぁ・・・」

余談3
全く悪いことをしていないのに、車に火のついた糞を投げ込む弟とTV版ジャイアンのようなバカ男の車の助手席に座ってしまった為に精神が錯乱した可哀想な姉貴。
コバチ

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