けーすけ

イエスタデイのけーすけのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2019年製作の映画)
3.7
2019/10/21(月) T・ジョイPRINCE品川 シアター9 19:00回にて鑑賞
このスクリーンは11番がほぼセンター。G・H列あたりが観やすいですかね。


主人公は売れないシンガーソングライターのジャック。幼馴染のエリーがマネージャー代わりとなりカフェライブや小さなフェスなどに細々と出演するが自分の才能の無さに悲嘆し、音楽は諦めようと決めた。そんな夜、世界規模で大停電が発生。暗闇になったタイミングでジャックはバスとぶつかる事故に遭遇し昏睡状態に。目が覚めると、そこはビートルズが存在していない世界だった…。


設定だけ聞くと、日本でここ数年流行っているいわゆる「なろう系」かつ異世界転生的な感じが真っ先に頭に浮かんだのですが、そんな感じでほぼ間違いないかと。流れとしては音楽成り上がりを絡めたラブストーリーでした。
まず誰もが知っているであろうビートルズの楽曲。それらがバンド含め存在していない世界で、曲を知っているのは自分だけ。ちょっと音楽好きなら夢想してしまうシチュエーション。果たして、、、。


因みに、10年程前に講談社のモーニングで連載されていた「僕はビートルズ」って漫画があって、これは2010年代を生きるビートルズのコピーバンドをしている若者達が、ビートルズがデビューする前の時代にタイムスリップし、ビートルズの曲で先に有名になる、という話。
有名になる目的としては「ビートルズより先に彼らの楽曲を出せば、触発されてビートルズが発表しなかった新曲が出てくるのでは」というこじれたビートルズ愛からの物語。これも面白いのでオススメします。


ビートルズが活動していた8年程の間に作られた楽曲は213曲。上述した「僕はビートルズ」では幻の214曲目を引き出そうとしたわけですが、今作の主人公は213曲しか知らない(さらには全て覚えていないフシあり)。
自分が作ってきたオリジナル曲なんて誰も見向きしない事も知っているし、そんな自身の才能の無さを自覚していて、他人の、それもビートルズの楽曲で有名になっていくって、冷静に考えたら超恐ろしい。
最初のうちはいいだろうけど、音楽が湯水のごとく消費される現代、あっという間に使い尽くされる。
劇中でも新作の発売に関する会議や、レコーディングでビートルズのあの名曲にまさかの修正を加えられるというくだりもあり、それらが主人公の苦悩をさらに加速させることに・・・。
ラストは一応救いがあってよかった(因みに夢オチではないのでご安心を)。


印象に残った所は、ジャックが表立ってデビューする時の“ルーフトップコンサート”をオマージュしたであろう演出とその時の楽曲。←このシーンが一番良かったかも。
あと、ビートルズは存在してない世界だけど、メンバーの一員であっただろう人物が描かれており、その彼が「Get back」というセリフを言うくだりにグっときましたよ…。
それとエド・シーランのスマホの着信メロディ・・・w



ただ、やはり自身も音楽をやってきた者として、ビートルズが存在してなかったらエド・シーランすらも世に出ていない、数多くのバンドが誕生していない我々の知るものとは全く違った音楽世界になってるんじゃないかなー、って思っちゃうわけですよ。そのあたりをつい脳内で真面目に考えてしまって少し入り込めなかった…。

タバコや、1800年代後半から存在してたはずのコカ・コーラまで無くなってるってのは、もうビートルズ以前の歴史も違う世界線なんだろうなーと解釈する事にしました。



気になっちゃう部分はちょいちょいありましたが、全体にビートルズ愛溢れており、ジャックとエリーのくっつくのかどうなのかの恋愛部分も爽やかに描かれており、そっち主体で観れば十分に楽しめると思います。
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