しめじろー

フリーソロのしめじろーのレビュー・感想・評価

フリーソロ(2018年製作の映画)
4.0
ロープなし、落ちたら終わり。断崖絶壁を身一つで登る究極のロッククライミング「フリーソロ」に挑む若者アレックスを描いたドキュメンタリーです。
わずかな岩の隙間に指を入れ、そこ溝あります??というような頼りない窪みに足先を引っ掛け、全体重を預ける。高さ970mの断崖絶壁、一瞬のミスが全ての終わりである。私自身はとっても臆病で、ちょっとでもリスクがあると尻込みするタイプなので、ほんと気が知れないという感じ。「何故こんなことを?」に終始着目して見ていました。
アレックスはただのスリル狂というわけでなく、入念な下準備とコース取りを重ねて、完璧だと確信できるまでは挑まない。彼を長年撮り続ける映画監督も「彼はとても慎重で…」と言う。かわいい恋人もいる。じゃあ何で??アレックスは言う。「フリーソロはロープありとは違って完璧じゃないとダメ。完璧か死かのどちらかしかない。完璧にできたということが気持ちいい。」この台詞でははあーとなりました。この人の人生には妥協がないのだ。幼い頃から完璧を良しとして生きてきたのだ…。寸分の狂いもなく各プロセスを完璧にやり遂げて、結果として断崖絶壁を登りきる。100点を取るのだ。それはきっと、とっても気持ちがいいだろうな…。意外と普遍的な感情ではないでしょうか。だからといってどこか狂っていることに変わりはないけども。
途方もなく広がる大自然の岩肌に、赤いシャツがぽつん。指の腹2本ほどの段差に手をかけて、身一つで壁を登っていく。撮影クルーも目を背けるほどの緊張感です。ここは難所だ、死ぬかもしれない。いや何でもないところでふと死ぬかもしれない。映画館の暗闇で息を潜め、身を硬くして鑑賞しました。そして彼はーー。ド迫力の映像はもちろん、彼の心境、彼の周囲の心境、撮影そのものにもドラマがあり、大変見応えのあるドキュメンタリーでした。