銀色のファクシミリ

テロルンとルンルンの銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

テロルンとルンルン(2018年製作の映画)
4.0
『#テロルンとルンルン』(2020/日)
劇場にて。ある青年と少女の、不器用でぎこちなく、切ない交流の物語。49分という中編映画ゆえに、描かれない余白まで切なく見える映画でした。

感想。ある事情で長年引きこもっている青年、朝比奈類(岡山天音)。ある理由で孤立している高校生、上田瑠海(小野莉奈)。二人の抱える事情と理由は簡単な事ではない。しかし現在の状況は「もう少しなんとかなるのでは」と思えるもの。でもそこは本人にしかわからないなにかがあって孤独に生きている。

ふとした偶然で瑠海が類の存在を知り、二人は近づいていく。そのきっかけが、類の「孤独ではない、なにかになりたい」という淡い希望から生まれたものであることと、そして瑠海が彼に近づく理由を作って訪れるのが「孤独ではない、なにかになりたい」という淡い希望から生まれたものなのが、とにかく切ない。また二人が交流できるのは窓の前だけというのも、互いの交流のぎこちなさが見える良きシーン。

生まれたばかりの二人の交流を襲うトラブルも、元々は二人が周囲と交流していないから生まれた誤解というのも哀しいところ。終盤の「自分のためにすらなにも出来なかった自分」が、ごくわずかでも「人のためになにかをしようとする自分」になっていくのが、しみじみ良かったです。

主役二人のセリフがとても少ない映画ですが、逆にいえばセリフじゃなく演技で心情を伝えなければならない難しい主役。でもそこは「未熟な人を演じれば日本一」な岡山天音と「フラームの期待の新星」小野莉奈が共に申し分なかったのです。まあこの二人だから観に行ったのですけど。感想オシマイ。

ちょっと追記。タイトルがゆるキャラの名前が並んでいるようなポップな感じですが、作中では嘲笑まじりで呼ばれる、むしろ蔑称である点がガツンとくるのですよね。そういう意味でセンスある良いタイトル。追記もオシマイ。