銀色のファクシミリ

告白の銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

告白(2010年製作の映画)
4.4
『#告白』(2010/日)
自宅にて。原作既読。中島哲也監督は、自分の映像の力を信じている監督だと思う。とにかく温度、暖気、体温を感じさせない美しくも硬質な映像が印象的。昼間なのに沼の底のような暗く寒々しい教室。冷気と緊張感をまとっている映像の数々に、観ているこちらも重苦しさと息苦しさを感じてしまうほど。冷温の空気は、物語全体の温度と、主人公の心の温度を表しているのだろう、心の温度を感じさせる映像は初めて見たかも。

主人公・森口悠子(松たか子)は、シングルマザーであり、被害者の母であり、容疑者のクラスの担任教師であり、教育者である。その全てを背負った「復讐者」としての行動が描かれ、ラストのたった一言で、結末はより複雑(意味不明ではなく)なものを残して、判断は観客に委ねられる。ラスト一言で原作とは違う魅力を引き出して傑作映画になった。

悠子が「なにをしたか」は語られないものの、犯人のなんの裏付けもない全能感による「悪意」を、非情に徹した大人の「悪意」が叩き潰していく物語なのは確か。犯人を破滅させた「大人の本気」が、ラスト一言を、あんなに、おどけながらも悲しみを含んだ調子で言わせたんじゃないかなと思う。感想オシマイ。