銀色のファクシミリ

ミスミソウの銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

ミスミソウ(2017年製作の映画)
4.1
『#ミスミソウ』(2018/日)
自宅にて。いじめがエスカレートした結果、家を焼かれ、家族を殺された少女・春花の復讐の物語。原作コミックを忠実に映像化し、R15指定で公開された衝撃作。中学生同士の凄惨な暴力の応酬だが、悪趣味なだけの映画に陥っていないのが良い。

感想。雪に覆われた白い世界で強調される、鮮血の赤とコートの赤。哀しき復讐者である主人公の、孤高の美しさを際立たせた実写映像で伝える力が大きい。また原作では、復讐の衝動に駆られていく主人公の目に、狂気が宿るデフォルメ表現などがあったが、実写版では無理に漫画らしさに寄せなかった好改変。狂気に身を委ねず、殺戮の愉悦にも酔わず、家族の仇を討つには「正しくないこと」しか選択肢がなかった中学生の、哀しい戦いとして描かれていく。

主人公と家族以外は、登場人物の全員が他者と理解しあわない冷たく澱む狂った世界。主人公は家族を殺され、白く幻想的な狂った世界に一人、赤いコートを着て立つ。赤は、復讐者への返り血を表すと同時に、この狂った世界とは異なる色彩を纏う「ただ一人の正気の人間」も象徴している。

恐怖と怒りから反撃に出る同級生たちと春花の戦いは凄惨を極め、雪山を鮮血に染めていく。現実ばなれした、不自然なことが多いストーリーながら、白い雪景色が物語を淡い幻想に包んで哀しき復讐者の気持ちを際立たせていく。誰も理解し合わない世界で、ただ一人だけ春花と心を通わせていた人物が見るラストシーンが、やるせなく切ない。感想オシマイ。