銀色のファクシミリ

空(カラ)の味の銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

空(カラ)の味(2016年製作の映画)
3.8
『#空(カラ)の味』(2017/日)
自宅にて。ささいなきっかけから摂食障害になった聡子は、見守ってくれる家族や友達とも気まずくなり、行き場のない苦しみの中にいた。しかし、ある人物との出会いによって変化していく物語。

ある人物とは、訪れた病院に通院していた女性、マキさん。赤の他人だけど家族や友人とは違うフラットな立場にいて、かつ同じ病院に通う人。そんな相手だから打ち明けられた悩みと苦しみ。批判せずに受け入れてくれるマキに聡子は救われるが、マキの病状は自分より深刻であることを気づいてしまい...と展開していく。

苦しみを共感しづらい障害ゆえに、聡子が周囲とギクシャクしていく前半は観ていて辛いが、後半に「同病、相哀れむ」の如く、マキがを聡子の理解者になってくれるシーンには不思議な安堵感がある。マキが最後にどうなったかは明らかになっていないが、聡子の最後の言葉が「病院でたまたま出会って、親しくなった人」との距離感を上手く出していて、寂寥感と同時に希望があるラストになっている。いい映画でした。