きよぼん

エリカ38のきよぼんのレビュー・感想・評価

エリカ38(2018年製作の映画)
3.8
SNSの功罪のひとつは「人が群れをつくってしまう」ことにあるでしょう。

同じ趣味や考えの人が、よりディープに語り合えるのは功の部分。罪は反対に、極端な考えが否定されず補強されてしまうこと。たとえば、「あんな奴死ねばいい」と心に浮かんでも、リアルではすぐにその思いは打ち消されます。しかし、ネットに書き込むと「自分もそう思った」という人が現れて、じゃあこれでいいのかと、どんどん極端な考えに流れてしまうことがあります。

でもこれはSNSだから起こる現象でしょうか?この映画で投資詐欺を持ちかける聡子(浅田美代子)とその被害者をみていると、「群れをつくりたがる」というのはネット関係なく、人間の性だと思うのです。

聡子は演じる浅田美代子の好演もあってキュート。でも現実はどうだったかわかりませんが、頭のキレる「天才詐欺師」とは描かれてません。

聡子が後の被害者となる出資者をレストランに集めて投資をつのるシーン。被害者が「わたし出します」「わたしも」と続いていく下りをみてると、加害者、被害者という分け方よりも、同じ「群れ」に入ってしまってるようにみえました。責任があるかどうかは別にして、詐欺師・聡子を育ててしまったのは、同士で極端な考えに乗って加速してしまった被害者もその一部じゃないかと。

「群れ」は人を呼び寄せます。怪しさしなかい平澤(平岳大)や信子(木内みどり)も一緒になって、さらに「群れ」は大きくなります。でもやっぱり中心にいる聡子は特別な人間じゃないんです。

後半の見せ場となる出資者が聡子にくってかかるシーン。ここでも聡子は興奮する出資者をうまくかわすことができません。むしろものすごいエネルギーを発散している出資者をみていると、このエネルギーみたいな流れに人は引き寄せられたんじゃないかと思うんですね。

世の中これだけ情報があふれてるのに、自分だけ儲かると考えるとバカね、色仕掛けに落ちるとかアホかと思いがちです。でもなぜなくならいのかというと、理屈抜きで引き寄せられるものかもしれなくて、「群れ」の中に入ってしまうと、みえなくなるものかもしれないですね。
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