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ニノチカのtjZeroのレビュー・感想・評価

ニノチカ(1939年製作の映画)
4.5
ロシアの旧貴族から没収された宝石類が、パリで売りに出される。
元の持ち主である大公女と、外貨を稼ぎたいソ連邦とが法廷で所有権を争う。
公女のパトロンである伯爵のレオン(メルヴィン・ダグラス)と、ソ連側の代表として送り込まれた大使のニノチカ(グレタ・ガルボ)は、互いの立場を知らずに知り合い、恋におちてしまう…。

当時の美女の代名詞でもあった、ガルボの堅物女史ぶりが可笑しい。
ポーランドの戦場では軍曹として戦い、特命全権大使にまで出世したキャリア・ウーマン役。
花の都パリでも強面を通し、エッフェル塔に向かっても観光はせず、建築の研究のためと称して、階段で展望台まで登り切ってしまう。

そんな鉄仮面のようなニノチカが、パリの伊達男である伯爵にほだされて”雪融け”していく様が見どころ。

異文化や男女間のギャップによるおかしさを狙ったロマンティック・コメディ…といえば『ローマの休日』(’53年)を思い出すけど、こっちの方が先(’39年)だから、『ローマ~』の方が影響を受けているのかも。

ソフィスティケート・コメディの大家であるエルンスト・ルビッチ監督が、弟子筋に当たるビリー・ワイルダーらによる脚本を洒脱に仕上げた傑作。

それにしても、1939年作って、いい作品が多いなあ。
『駅馬車』、『風と共に去りぬ』、『スミス都へ行く』、『オズの魔法使い』、『コンドル』、『ゲームの規則』、『鴛鴦歌合戦』…などなど、戦前の映画文化のピークだったのかもしれない。
世界大戦によって、この豊かな文化が一旦”チャラ”になってしまったのが惜しまれる。

今回のコロナ禍で、いろんなエンタメが”チャラ”にならないことを祈りたい。
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