まぐ

クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険のまぐのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

歴代しんちゃん映画でもかなりの支持を受けており、いつか見たいと思っていた映画。

全体としてのまとまりはオトナ帝国、アッパレには劣るものの、各シーンの魅力は先の2作も凌いでいると個人的には思いました。しんちゃんらしからぬ気合の入った戦闘作画のプロローグ、色や画角、陰影の有無を使った違和感、不気味さの演出が映える前半、急に絵のタッチが変わりシュールな緊張感の漂うババ抜きシーン、振り切ってデフォルメされた絵柄を活かした鬼ごっこのシーンなど、一つの作品なのに次から次へと画的な引き出しを見せてくれ、それだけで満足度は高いです。歴代の中で、クレヨンしんちゃんシリーズの絵の潜在的な自由度の高さが最も活かされている劇場作品かも?(まだ全部見たわけではないので断言はできないですが)
しんちゃんがひろしとみさえを助けにヘンダーランドに向かい、三つの門の前でクレイGと対面したシーンが個人的なハイライトです。伏線として三つ門があること、ジャンケンが名前に入った3人の幹部がいることを出しているので、いやおうなく「幹部を1人倒すたびに門が一つ開いて、3人倒すとヘンダーランドのオカマ魔女にたどり着くんだな…」とワクワクします。しかししんちゃんは線路を作り、直接城の中へ。期待を裏切られると同時にスゲーナスゴイデスの使い道の広さ、これからの対決のスケールの大きさが塗り替えられ、さらにもう一つ上のワクワクを味わうことになりました。あそこまでこちらの気持ちを弄ぶ演出はあまり見たことがなく、印象に残ります。

脚本は正直、中だるみもしますし、ツッコミどころだらけです。カードをぜんぶ使い切らずババ抜きで消費するのももったいないですし、魅力的なシーンが多いぶん何がメインなのかわかりづらくなっていて話に没入しづらかったり。今までのしんちゃんならなんとも思わないだろ、というところでとことんしんちゃんが落ち込んでいたのも違和感がありました。シリーズものの難しいところではあると思いますが。

ただ、独特のなにか記憶に残る匂いはある映画だなあと思います。まさに閉園後の遊園地のような雰囲気。
こういう映画が一本あってもいいなあ、と思えるのがシリーズものの強みではないでしょうか。
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