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クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険のHKのレビュー・感想・評価

3.8
クレヨンしんちゃん映画シリーズ第四作目。監督は今回で一旦しんちゃん映画から手を引く本郷みつる。キャストは矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、渕崎ゆり子、古川登志夫などなど

闇に覆われたどこかの国で、とある王子がマカオとジョマに呪いをかけられる。一方そのころしんちゃんは、幼稚園の遠足で群馬にできたヘンダーランドという遊園地に行くことに。しかし、そこでしんちゃんは奇妙な経験をする。果たしてどうなるのか。

初期クレしん映画だと、この映画が一番評判が高い作品ですね。自分としても好きな作品でとても面白いのですが、前作がとても大好きな自分からすると、まあまあ、それでも面白い作品だと思いますよ。

今作のオカマ枠は、ラスボスであるマカオとジョマ、声優は大塚芳忠さんと田中秀幸さん。芳忠さんは本当に特徴的な声でよく分かる、田中秀幸さんは工藤新一のお父さんの声優さんですね。

今作のヒロイン枠は、からくり人形のトッペマ・マペット。前作と同じく回文を上手く利用している。声優さんは渕崎ゆり子さん。少女革命ウテナのアンシーの声優さんですね。

なんか、湯浅ワールド全開なんですけど、中の人に渕崎ゆり子さんがいるせいか、どうしても後年の幾原ワールドも関係しているのではないか?と思ってしまう。やはりこういう幻想的だけども怖くて歪な世界観という点で二人とも共通点があるというのは面白い。矢島さんもウテナに出てるしね。

クレヨンしんちゃんは前作ぐらいから、それこそシリアス路線で行ったとしても、すごい質の高いシークエンスを創り上げ提供していきました。しかし、必ずシリアス一辺倒になることはありません。

そこにクレヨンしんちゃんだからこそ保たなくてはいけない子供向け、そしてギャグ漫画としての制御というのが必要なのですが、そこをクレしん映画はナンセンスコメディとしての面白さをぶち込むことで、シリアスになりきらないように保っていたからこそ、様々な分野の映画の要素を盛り込みながら成長できたのかと思います。

このヘンダーランドも、その一つですね。ホラー映画的な演出、それこそ日常に迷い込む非日常、それが日常を言ってしまえば侵食する怖さ。これをス・ノーマン・パーというキャラクターを見事に使って描いている訳です。

しかし、絶対に怖い一辺倒で止まることはありません。古川登志夫さんの演技がちょっとギャグテイストなのもあるのですが、シリアスになりきらずに、アクション仮面やカンタムロボなどが登場するという場面に行くのです。

この子供向けだからと言って妥協しない、でも子供向けだからこそ制御する。この匙加減や塩梅が絶妙に上手いのが今作なのですよね。そのために上質な巻き込まれ型サスペンスの体裁も持っている訳なのですよね。

ある種、このようなギャグ、つまり笑いとシリアスの塩梅のバランスの置き方というのが、これもちょっと何もかも押し付け気味と最近では自分は感じますが、喜八イズムを感じます。

若しくは、アメリカのノワール映画的な、ハワードホークスとかが撮ってそうなスクールボールコメディに通ずる面白さともつながるのではないのでしょうかね。

ヘンダーランドのあの不気味な建築物の在り方は湯浅ワールド全開ですね。もう御伽噺のそれこそ、ヨーロッパの昔話の建物に極彩色で塗りつけたものを持ってきたのが素晴らしいですね。

マカオとジョマの終盤の追いかけっこは、第一作のハイグレ魔王の終盤の展開をグレードアップさせたように思える。あそこの登場人物の遠近感を無視しながらも、躍動感があるように動いているのが素晴らしい。

全体的にも、それこそ湯浅正明監督の世界観が全面に出ながら、しんのすけがしっかりと成長するような描写もあり、とても初期クレしんの中ではバランスが取れたうえで質の高い作品だったかなと思いますね。

終盤についにしんちゃんが泣く。これ以降、ぶたのひづめや、あっぱれ戦国などでも泣きますが、結構ここぞで泣いたりすることはかなりあるので、色々としんちゃんの泣く姿なども見所かな。

いずれにしても、見れて良かったと思います。ゲスト出演の雛形あきこのキャラデザが美人。
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