しおえもんGoGo

ミッドサマーのしおえもんGoGoのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

キレイなウィッカーマンみたい。

もう全方向にしんどい映画だった。

まず序盤のダニーと彼女を取り巻く男たちの雰囲気が生々しくて、これだけで結構見ててしんどい。
ダニーは元からかなり重いタイプの恋人で、しかも家族に不幸があってすっかり腫れ物になってる彼女をクリスチャンが「面倒くさい」って思ってるのがすごく分かる。ダニーがスウェーデン行きを隠してたクリスチャンに「怒ってない、話し合いたいだけ」と言うシーンの、ダニーの絶妙な面倒くささ。スウェーデンにダニーを誘ったと言った時に仲間たちは「お前マジかよ…」みたいに言ってたのに、本人が来たら「平気だよ、おいでよ」って繕う笑顔。着いて早々にマリファナ吸うか吸わないかで、多分男たちは「だから連れてくるなよな」みたいなこと思ってて、空気を読んだダニーが合わせるんだけど、「無理に合わせてます」って顔してるから、またこれも絶妙に面倒くさい。
そういう、ダニーと周囲の乖離、ダニーはダニーで合わせようとしてるのに上手くいってないどころか余計面倒くさい感じになってるのがどっちの気持ちも分かるレベルでリアルだからしんどい。

村での光景は本当に夢のようにキレイで、スイスハーブキャンディとかティモテの世界観。でもみんなが満面の笑みを浮かべてるだけでなんでこんなに不気味なんだろうか。
そういう不気味さに加えて、どういう宗教体系か儀式様式か全く分からないけどすごく大事そうな祭りに放り込まれて、自分の言動がどんなタブーになるのか分からない中で行動しないといけないことを想像するだけでしんどい。フォークの上げ下げだけでも何かしら決まり事がありそうなのに、私だったら食事が喉を通らないわ。
そんな不穏さとドキドキを味わってたら突然の姥捨てダイブでとんでもないグロ映像が差し込まれる。あーそっち系?とびっくりしていたら、今度は「私帰る!」という絵にかいたようなフラグがあって、もうその後に出された「肉のパイ」ってそういうことですかね?って色々想像してしんどい。

祭りが進行するにつれダニー役の女優さんの表情が上手すぎて、笑ってるかと思えばへの字口になり、そうかと思えば無理して合わせてるあの顔になりで、彼女がどんどん現実感を喪失してるような表情にこっちまで不安定になっていく。
メイクイーンになってからは花、料理、山がウネウネ動いているので、車酔いでもしてるように本当に気持ち悪くなってきて、映像的にもかなりしんどい。思えば最初に村に入る車が反転するあのシーンからすでに結構吐き気を催していた。マリファナやったらこんな風に見えるのかしら。だとしたらあんまりいいものじゃなさそうだな。


ラストクリスチャンに引導を渡したダニー。やっと現実感をしっかり持って、相手に合わせるのではなくしっかり自分で選べたのかもしれない。
そしてここまで散々しんどい思いをしてきただけに、あのラストの笑顔には依存体質なダニーがついに依存を止めた爽快感を感じた。

余談だが、クリスチャンが赤毛の女の子と交わっているシーンで、急にその母親と思しき女性が参加してきて、ビクってなってるクリスチャンにウケた。そりゃビックリするよね。
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