rayconte

ベスト・オブ・エネミーズ ~価値ある闘い~のrayconteのレビュー・感想・評価

5.0
1970年代未だベトナム戦争只中である時代に、ノースカロライナで実際に起きたある二人の友情譚が原作だ。

町にひとつしかない黒人専用の小学校で火事があり、校舎が著しく損傷。
黒人住民は、白人の学校へ黒人児童を受け入れてもらうよう町に働きかけるのだが、白人保守層はこれを断固拒否し、話は平行線に。
最終決定は役所が出さなければならないが、どちらについても住民からは反発が起きる。
これを避けたい行政は、「シャレット」という短期集中議論の場を設け、対立する両者が集まり妥協点を住民自ら決めてもらうようにした。
白人側の代表はKKK支部を率いるC.P、黒人側代表は、地域活動家アン。
決して和解しえないであろう二人はしかし、互いの共通点に気づき、やがて理解を深めていく。

実話に基づく内容で、派手な脚色もない。
しかしながら、二人の関係性が積み上がっていく様を丁寧に描き、次第に最後まで見届けたい気持ちになる。
そして、サムロックウェルがとにかく素晴らしく、社会に対する自身の無力感や満たされない自己肯定感の拠り所を、過激な保守活動に向ける男の激情と悲哀を見事に表現している。(ガソリンって意外と簡単に爆発しねえんだな!?)

日本に住んでいて、現代に生きていても、そこかしこにKKKのような思想や行動がある。
中国人や韓国人を排斥しろと叫んだり、大坂なおみ氏を「日本人じゃない」と中傷したりと挙げればキリがないが、そのくせ彼らは日本に差別は存在しないとも言う。「事実を言ってるだけだから問題ない」と。
しかし、結局彼らは自分の居場所が欲しいだけなのだ。
何の才能も能力もなく、世間が自分の相手をしてくれない。でも、自分が世間にとって特に意味のない存在であることを受け入れられない。
だから生まれ持った国籍や人種、あるいは性別などをアイデンティティにして、当てはまらない人間を攻撃することで自分のポジションが高級なものであると思い、なおかつ思想で団結することでどこかに所属しているという実感も得られる。
これは劇中でC.PがKKKに入った理由と、団体を中々辞められなかった理由と同じだ。
C.Pが何よりも恐れていたのは自分を肯定してくれる場を失うことだった。
日本の過激な保守層も、国籍や人種を振りかざさなければ他に武器がないからそうしているだけの哀れな人々なのだ。
しかし、理性的な人々もただ黙っているべきではなく、何らかのアクションは必要だ。
その点において、この映画は分かり合えないはずの相手と向き合うことの重要性を示してくれている実用的な作品だと思う。

あと、アンヘッシュがまだまだ美人だったのでこの映画はやっぱり最高なのだ。
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