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幸福路のチーのDickのネタバレレビュー・内容・結末

幸福路のチー(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

1. 初版2020.01.07

❶マッチング:消化良好。

➋本作は監督・脚本を務めたソン・シンインの半自伝的な内容になっているそうである。

➌公式サイトによると、ソン・シンインの経歴は、以下の通りである。
「1974年台北生まれ。京都大学(日本)で映画理論を学んだ後、コロンビア・カレッジ・シカゴ(米国)で映画修士号を取得。映画監督になる前には、新聞記者、TVドラマの脚本家、写真家、そして2年間の京大留学時にはカラオケ店の店員など、さまざまな職業を経験。新聞記者時代にカンヌ国際映画祭の取材をしたこともある。」

❹本作の主人公チーは、1975年台湾生まれで、30歳を前にアメリカに渡っているので、ソン・シンインとは共通点が多い。チーの目線で語られる本作は、おそらくソン・シンイン自身が経験したことなのだろう。

❺第2次世界大戦中、日本の植民地となった台湾の領有権が、戦勝国である中国に移ったのが1945年(下記❿参照)。
以後、台湾は政治・経済・社会で激動の歴史を体験した。大地震で多数の命が奪われる悲劇も体験した。
それは、国民(台湾人)にとっても同様である。
そして、本作のリンと家族にとっても同様である。
その上、リンはアメリカに移住して、国際結婚をすると言う特別の経験をしている。

❻無垢で純真だった少女リンが、成長と共に、矛盾、不合理、差別等の社会の実態に直面し、戸惑い、悩み、怒り、悲しみ、苦しみ、そして、楽しみ、喜びながら、自分自身も成長していく様子が、描かれていく。

❼特にアメリカに渡ってから、キャリアウーマンとして認められ、結婚をして、子供も出来ると言う成功を収めたリン。でも、それは、自分の求める幸せとは違っていた。過去と現在、生れ故郷と第2の故郷、異なる世界の間で揺れ動く心。その答えは、リンの生まれ育った「幸福路」にあった。納得のいく結論である。

❽最後に下記献辞あり。
「dedicated to my family and my country.」

❾まとめ:
①絵は、決してスマートとは言えない、ぎこちなさとアンバランスがあるが、CGアニメにはない、血の通った温かみが感じられる。だから親しみが持てる。大いによろしい。
②ノスタルジーと未来への希望が感じられるストーリーに共感する。
③主人公が学んだ大切なことが次の言葉に要約されている。「心の目で物事を見る」。

❿トリビア:台湾の近代史と映画
①台湾の近代史については、『戯夢人生(1993)』、『悲情城市(1989)』、『セデック・バレ 第一部 第二部(2011)』、『童年往事 時の流れ(1985)』、『ヤンヤン夏の想い出(2000)』、『あの頃、君を追いかけた(2011)』、『海角七号 君想う、国境の南(2008)』、『ウェディング・バンケット(1993)』、『パッテンライ!! 〜南の島の水ものがたり〜(2008日)(アニメ)』等々の映画で断片的に知っている程度だが、親しみが持てる。
②本作でチーが生まれた1975年には、台湾の初代総統、蒋介石が亡くなって社会が嘆き悲しんでいるシーンが映される。蒋介石が中国から台湾に移る経緯は、メイベル・チャンの傑作、『宋家の三姉妹(1997日・中)』に詳しく描かれている。

2. 追記2020.05.08

❶受賞(代表例):
①東京アニメアワードフェスティバル2018:グランプリ。
②台北映画祭2018:受賞:観客賞、最優秀アニメ賞、グランプリ。

➋評価:
①Rotten Tomatoes:批評家6件のレビューで、支持率は100%、加重平均値は7.0/10。
②IMDb:一般545件のレビューで加重平均値は7.1/10。
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