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悪魔の棲む家 REBORNのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

悪魔の棲む家 REBORN(2018年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

1974年、デフェオ家の23歳の長男ロナルド(以下、通称"ブッチ")が事件を起こすまでを追った映画。

ブッチが、家庭内暴力を振るう父親との確執から、徐々に病んでいく姿が描かれる。

父親はブッチの誕生日の日でさえ彼を打擲し、マフィアのボスが手下を扱うような態度でブッチに接している。彼はおそらくやばい取引にも手を出している。

コックリさん的な降霊会で霊を呼び出す場面のレッドルームというのはライアン・レイノルズ版ではなかったが、オリジナル要素なのだろうか。

ある夜、ブッチはガールフレンドと会う車中から、銃を持つ人物を目撃する。それはLSDを服用した彼の見た幻覚なのか、悪魔が見せたものなのかは分からない。

なんというか、撮影がホームビデオみたいなクオリティだ。

イタリア系移民の家族。おそらく母親の実家が太い。彼女は暴力夫から逃れ、カリフォルニアで自立して働こうとしている。彼女の父親役=ブッチの祖父役でバート・ヤングが出演している。彼がブッチに誕生日プレゼントとして渡した車の鍵を父親が取り上げ、祖父が取り返す場面から、この家族の関係性が分かる展開は秀逸。

ブッチを父親のDVの哀れな被害者として描いているが、これは史実なのだろうか。もし創作なら、犠牲者となった父親の名誉を毀損している。しかし「事件の直前シラキューズ大学にブッチは落ちていた」といったディティールがあることから、もしかしたら史実に基づくのかもしれないと思わせる。

「3:15」という時刻がフィーチャーされているのは、ライアン・レイノルズのリメイクと同じ。

子どもが五人もいる子沢山の家族で、母親を夫も子どもも手伝わないため、一家の家事負担が彼女一人にかかっている。父親が入ってきたのに気づかないブッチの男友達がダイニングテーブルでドナにセクハラをしているのを見て、父親は「親の前でいちゃついてる」とドナを追いかけ回して叩く。男友達ではなく。めちゃくちゃ理不尽である。ブッチが病む理由も少し分かる。

ブッチは弟たちが父親のDVの標的にならないよう、敢えて家に留まっていたことが分かる。

しばしば家の周りを徘徊する怪しい車や画面を横切る影が出てくるが、なかなか正体が分からない。ブッチに忍び寄る影の描写も、『回路』に出てきたような作劇上求められた上でのスタイリッシュな感じはぜんぜんなく、ルックを作り込む余裕がなかったのか?と疑ってしまう。ブッチが踊り場で目にする空中に浮かぶライフルは、なんの工夫もなくただそこに在るだけなので、「予算がないのか撮り方が下手なのか‥」と思ってしまった。

長女ドナのルックス以外ぜんぜん70年代っぽくはない。

ライアン・レイノルズ版でジョディは女の子だったが、こちらは男の子である。

雷雨の音で銃声に気づかず、全員がうつ伏せで亡くなっており、事件後デフェオ家からなくなった金がいまでも見つかっていないという謎があるらしく、それにいちおうの理由らしきものを付けている。が、レイノルズ版にはあった因縁話みたいなものは深く追求されない。「祖父に土地を売ったモイナハン自身が一家惨殺事件を起こした」という新聞記事をドナが見つける以外は、何もない。過去の因縁をどれだけ描写できるかで、こういうオカルトホラーの格は決まると思うので、甚だ不十分な感じは残る。

稲光が間歇的に事件を起こすブッチの姿を映し出す、という演出はレイノルズ版と同じである。

殺人シーンでクローゼットに隠れてたのに見つかって殺された女の子がいないな(レイノルズ版ではジョディ)、と思ってたら、ドナが嵐の中戻ったから「うわあ…」と思った。レッドルームで殺されるのかと思ったら、普通に自室でネグリジェに着替えたから「なぜ?」と思った。そのシーンで「母親が「血の雨が降り注ぐ」とか「みんなで一緒に死ぬ」みたいなことを言っていた」とドナが思い出すんだが、夫のDVから逃げ出したいと願う母親が言うこととしてはおかしくないだろうか。なんというか、辻褄を合わせるために考え出された台詞としか思えない。

ブッチの顔が彼を乗っ取った悪魔の顔に一瞬変わる。そこがこの映画が力を入れた唯一のビジュアル・エフェクトと言える。

最後に流れるフッテージ写真や映像は死亡者写真も含め、本物を使っている。
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