るるびっち

クロール ー凶暴領域ーのるるびっちのレビュー・感想・評価

クロール ー凶暴領域ー(2019年製作の映画)
3.6
本当の恐怖はワニではない。
主人公ヘイリーが、足や腕を噛まれてもあの程度というのが謎の鍵。
動物史上最強の噛む力というから骨はグチャグチャじゃないかと思うが、そうはならない。理由がある・・・
水泳選手のヘイリーは子供時代に父親の特訓を受けていたが、今は疎遠。記録の壁に悩み、情熱を失いかけていた。
ワニ地獄を生き延びることで、自信と父との絆を取り戻したヘイリー。そうした解り易い構造の映画に、一見思える・・・
「私みんな気づいてしまった しあわせ芝居の舞台裏~♬」(中島みゆき『しあわせ芝居』)

ヘイリーの父は何故、ハリケーンの時にわざわざ昔の家に行ったのか。
何故、心配するヘイリーの電話に出なかったのか。
何故、ワニの巣食う地下室に居たのか。
そして何故あれほどワニに詳しいのか、飼育係でもなさそうなのに・・・
この不自然さの謎を解ける、たった一つの真実がある。

電話に出ないのは、疎遠で口もきかない娘を呼び戻す為。
電話に出れば喧嘩してしまう。
出なければ、実は父親想いのヘイリーは安否を気遣い来ると見越していたのだ。状況が困難な程燃える娘なので、ハリケーンの日を狙った。
排水管を直す為とか、湖の水が溢れ排水管を伝ってワニが来たとか全部嘘だ。
ヘイリーをワニに襲わせる為、自分が囮になって娘を引き込んだのである!!
可愛い娘に何故そんなことを!?
彼が星一徹も逃げ出す、狂信的な鬼教官で競泳バカだからだ。
ワニに追いかけられれば命がけで泳ぐ。精神的な壁など、真の恐怖の前では単なる言い訳だ。生存本能こそが彼女の新記録を生み出す特効薬だ!!
そして、誰にも負けない自信を獲得する。ワニに勝ったのだから!!
全ては競泳に自信を失った娘を鍛え直すプログラム。
命がけの「ワニ合宿」なのである!!! 行きたくねー!!!💦
だからタイトルが『クロール』、実は競泳映画なのだ。
ワニより怖いモノ、それは父親の狂った愛情だ。彼は心底娘の為、あらかじめワニを地下室に仕込んでいたのだ。
「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」
それこそが真のホラー。
皆さん見えませんでしたか? 必死に泳ぐヘイリーを襲うワニの尻尾を、後ろで親父が掴んでスピード調整していたのを!!

ヘイリーが噛まれても大怪我にならないのは、歯槽膿漏のワニを仕込んでいたからに違いない。これで不自然さの説明がつく。ワニに詳しいのも道理だ。娘の為に予め調べていたのだ。
しかし誤算があった。ハリケーンのせいで防波堤が決壊し、湖のワニが本当に侵入したのだ。だから被害者を襲ったのは、ヘイリーのとは別のワニに違いない。父親が、歯槽膿漏ではない健康なワニに噛まれるのも天罰だろう。
もっとも、娘を鍛える為なら他人や自分が食われても平気そうだが・・・
それに被害に遭った一人は長女の元カレだ。元々気に食わなかったのだろう。
やはり、本当に恐ろしいのはワニでもサメでもなく人間ということだ。
「私みんな気づいてしまった~♬」
妄想ではありません!! 信じるか信じないかは、あなた次第ですが・・・
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