Melko

エッシャー 視覚の魔術師/エッシャー 無限の旅のMelkoのレビュー・感想・評価

3.5
「部屋を背景にした肖像画を描きたいとは思わない。人の頭を描くなら、背景も同じくらい意味を持つべきだ」

「何十年も昔の作品に、私ほど向き合う人間が他にいるだろうか?創造的な活動ではない。墓を掘り起こすような仕事だ」

Tessellation: テッセレーション
→ 3次元の画像を、より詳細かつ滑らかで現実感を持って2次元で表現する技術である

その昔、エッシャーの展覧会に行ったことがある
見てるとなんとなく不安になる絵ばかりだった。でも、目を逸せない。
それがどうやって描かれているのか、どんなトリックになってるのか、細部までみたい衝動に駆られる。一つ一つの細部をゆっくり見てると日が暮れそうな膨大な量の作品。
不思議な魅力を放つ絵

エッシャーは画家ではなく、グラフィックデザイナー
数学系の優秀な家系に生まれながら、数学が苦手な落ちこぼれ。その代わり、絵は抜群にうまかった
親の意向で建築家を目指すも挫折、出会った恩師の勧めでグラフィックアートの道へ。
生まれつき兼ね備えた数学のセンスと持ち前の写生の上手さに、鍛錬を積んだ木版画の技術。
加えて、子供の頃よくやってた連想ゲームの経験。それが、あの有名な
田んぼが鳥に変化する絵や、
鳥が魚に変化する絵
菱形がトカゲになる絵
などに生かされている。

無意識に結晶学を二次元で実践しちゃう、凡人には理解不能な領域
落ちこぼれなんかじゃないじゃん

エッシャーの人生と彼が残した作品の数々、時代の暗い影、葛藤などが映し出され、ほえ〜〜と思いつつ、そのどれもがふんわり薄いので、作品としてのテンポはあまり良くないし、眠くなる。
エッシャーの絵が動いたりとか、心情のナレーションがあるのは革新的で飽きないとは思いつつ。
エッシャーという人を、なんとなくふわっと掴むにはイイ作品かも。
てかそもそもオランダ人だったんだね。

ユダヤ人である恩師が家族共々ナチスに連行された後、その作品をナチスに没収されないように回収して守り抜き、生涯大事にしたという漢気エピソード

最愛の奥さんと自分を解けた包帯みたいなので繋げた、後悔の気持ちと愛の証

60年代後半のヒッピー達にデザインをパクられサイケデリックに着色された商品が出回ってたことに腹を立てる
「私が今風でイカしてるとでも思ってるのか?」と。
うんうん、イカしてると思う。蛍光色に塗らなくても、元がイカしてると思う。

それまでの眠い進行が嘘かのような、ラスト3分エンドロールの前半が1番テンション上がった笑
アゲアゲな音楽と共に展開される、エッシャーの作品またはそれに影響を受けた作品たち。
絶対そうだよね、と思ってた、大好きな「ラビリンス 魔王の迷宮」の終盤、階段の家シーンも出てきてホッコリ。
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