凄すぎる。映画ってすげえ!
一つの無駄もなく、緻密に作り上げられ。積み重ねられた映画。
観客が金を払い、暗い部屋で大きなスクリーンで一つの画面を観る。
どうしたら観客が映画に入り込み、楽しみ、そしてそこからその一個奥のレイヤーに目を向けたいと感じるか。
構成を緻密に組み立ててなお、それら全体に芸術やテーマを持たせてしまおうというのである。
そのためなら、エンタメもコメディもサスペンスも、何だって使い、それら全てをまとめ上げてしまう。
凄すぎた。
シークエンスを構成するシーンのひとつひとつやその間の転調部分まで、一つの無駄も無い。
思い返しただけで心に鮮明に描かれる印象的なシーン、それらが紡ぎ出す、痛いほどの「人間の性」。
人間が目を背けたい部分、自分には無いと信じたくても確かに存在する負の部分、そこに立ちいるからこそ、映画がクライマックスに行くにつれ感情が昂り、溜め込んだ狂気の開放を期待する。映画の退廃的な空気感が極まり、映画が崩壊に向かうにつれ、それがカタルシスへと繋がっていく。
隅々まで思考を張り巡らせながら観ても、一度では理解し得ないほどの映画のテーマ。しかし、やがて「わからない」という事が心地良くなっていく。
あれは一体どういう意味?
あれは結局どうなった?
分からなさを楽しみ尽くせた。こんな映画は滅多に無いだろう…
悪なき心は善か?
彼らは善の心を訴えて来ているのか?
他人の心を悪だとか善だとか、定義つけられるほど人間は賢くないし、美しくない。
この映画で描き出される「ぶっ飛んだリアリティ」から見えてくる人間の性は、観るものを必ずや唸らすのではないだろうか。