ゲイリーゲイリー

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビューのゲイリーゲイリーのレビュー・感想・評価

3.5
青春学園モノと呼ばれるジャンルに新たなる風穴を開けた本作。
枠組み自体は従来の青春学園モノを模倣しつつも、ジェンダーに関する視点や人種的な視点はアップグレードされている。

個人的に好きだったのは、ドラッグによってモリーとエイミーは自身の体が人形に見えてしまうという幻覚症状に陥るシーンだ。人形ならではのスリムな体になった自身を見たモリーが、スリムになったことを喜ぶのではなく失った脂肪を嘆く。このシーンでは、女性なら誰しもスリムな体を求めるだろうという浅はかな先入観を揶揄しているかのように感じられた。

勉強一筋で有名大学に入学する事が決まったモリーは、遊ぼ呆けている同級生たちを見下していた。
だが、遊び呆けていたはずの彼らの進路も自身と同じレベルの大学だと知り、密かに抱いていた優越感が崩れるところから物語は始まる。
モリーは他者を見下す事で、優越感を得て自己肯定していたのだ。

しかし物語が進むにつれ、モリーは今まで接してこなかった同級生達の違った一面を見る。
男好きな女だと軽蔑していた人物も、金持ちでバカだと呆れていた人物も、自身が憧れていた人物も、そしてずっとそばにいた親友のエイミーのことすらも自らの先入観によって、表面的な一部しか見えていなかったとモリーは気づく。
そしてモリーは他者を見下すことによって自己肯定するのではなく、他者を理解し違いを受けれることで、自らをも肯定できるようになっていくのだ。

モリーとエイミーの友情は、可笑しくも美しく、とても愛おしい。
彼女達の和気あいあいとしたやり取りを、ずっと見ていたいと思った。