シネマスナイパーF

悪人伝のシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

悪人伝(2018年製作の映画)
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英題が続・夕陽のガンマンっぽく、話が似ているかはさておき、シンプルでかっこいい
邦題の悪人伝ってのは原題をそのまま訳したものなので、韓国でのタイトルも悪人伝
これもシンプルでかっこいいよな
映画自体もそう
超ストレートな娯楽映画で文句なしに面白い


頑張ればもうちょっとクレバーな脚本にできた気はする
例えば、組長がカタギに優しくするくだりがあんな形でクライマックスの引き金となるとはそりゃ超燃えるんだけど、ぶっちゃけ優しくするくだり自体は割と不自然に浮いた置き方されてると思う
まあでもスマートなところはスマート
日本人なら誰が見ても武井壮なテソク刑事が破天荒ながらヤクザにビビらないパワフルな男とわからせる導入はスピーディでいいじゃないの
手を組むことで潜入捜査も同時に進められる話なのもオイシイところで、シナリオを深く意識しなくても様々な要素が勝手に付け足されていく設定は上手いこと考えたなぁ
まさか、終わりの終わりの方で舞台があそこに移るとは本当に思わなかったから少し不意打ちだったし、そこに至るまでの流れがあるから組長登場がめちゃくちゃアガるというね

マ・ドンソクだけの映画になってないところが偉いね
刑事役のキム・ムヨルさん、悪魔役のキム・ソンギュさん、三者全員抜群の存在感
特に、刑事と組長が一緒の時の相性の良さが見てて気持ちいい
ふたりが一緒に画面に映ってる、それだけでなんかいいよね
マ・ドンソクの色々な意味での大きさがあるからこそ、刑事役のキム・ムヨルさんも全力で良さを出していけてるし、キム・ムヨルさん自身体重を15キロ増やしたという努力もデカい
悪魔を演じるキム・ソンギュさんの不敵な笑み、佇まいは物語を動かすのに充分すぎるし、今後様々な映画で同じような役やらされちゃうんじゃないのってぐらいのハマり役だと思う

刑事は刑事なりの正義をちゃんと果たそうとしてるし、ヤクザはヤクザなりに暴力だらけで気持ちいいし、悪魔は悪魔で清々しいほど無慈悲
奇を衒わないから直球で面白い
刑事そこまで悪人じゃなくね?と思うけども、ヤクザ側がちゃんとエグめの抗争やってるから、それと手を組むヤバさ、乗ってる同じ船の悪さに説得力がある
下っ端に対する仕打ち、特に歯のやつは思い出すだけで痛くなってくるし、まさかの人間サンドバッグには少し引いた
超悪役な悪魔の過去にどうやら闇があるらしいが敢えてそこは具体的に語らない、というのも不気味さを増すばかりで悪くない判断だと思う

祭り感が強いのも楽しい
ヤクザが大勢でカチコミはもちろん盛り上がるし、満を持して刑事チームとヤクザチームがいよいよ本腰を入れ手を組むとこは絵面のかっこよさもあって超アガる
宴会シーンもあるし、その和気藹々とした楽しい盛り上がりからの怒涛のクライマックスという流れには超興奮!フゥゥゥーッッ!
大人数入り乱れての乱闘では小細工なしのシンプルな撮影をしているので、生々しさが半端ねえ
悪魔の乗る車を白に設定してるのもヤクザや刑事と差別化できてて分かりやすいし上手い
オープニングからして夜の街が魅力的で、ネオンがピカピカしているそれだけでなんか只事じゃねえ盛り上がりが待っている匂いがプンプンする

先述した悪魔の過去もそうですが、ここぞという場所や要素に関しては、視覚的、物語的に敢えて情報を抑えている気がする
クライマックスの引金となる出来事も、前振りが不自然とは言ったものの回収の仕方はいい抑制が効いているので、「そんな、まさか…」と劇中の登場人物と我々の感情が見事にシンクロした
ヤクザの裏社会での暴力は話に直接絡まないくだりだとしても見せていくんだけど、自分はこの映画、基本的に刑事の心理を話の芯として観賞したので、そうなると必要な描写だったかなとは思う
悪人伝だしね!!!


祭りです祭り
個人的に今年の韓国映画の超娯楽作としてはエクストリーム・ジョブと双璧を成す存在
こっちの方がバイオレンス、ダークさがあるので、韓国映画ならではのジメッとした空気も味わえて好み!!
武井壮刑事の敬礼、マブリーと悪魔のガン飛ばし合いで締めるというこれまたテンションをマックスに上げた状態で幕を下ろすサービス精神には恐れ入った
超超超面白かった