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郊外の鳥たちのギルドのレビュー・感想・評価

郊外の鳥たち(2018年製作の映画)
4.0
【都市の生命に宿る人生の輪廻】
■あらすじ
地盤沈下が進んだため「鬼城」(ゴーストタウン)と化してしまった地方都市。地質調査にやって来た測量技師の青年ハオは、廃校になった小学校の机の中から、自分と同じ名前の男の子の日記を発見する。そこには、開発が進む都市で日常を謳歌する子どもたちの姿がつづられていた。やがてその子どもたちは、1人また1人と姿を消していく。

■みどころ
面白かったです!
現代でゴーストタウンと化した地方都市の沈下に対する地質調査をする青年ハオ、廃校になった小学校で見つけた日記に登場する別人ハオの2者のエピソードを絡めたお話。

過去と現在の時制を地続きにしつつも、2者の話を交錯したり離れたり掻き乱していく展開が印象的な映画でした。
フー・ボー「象は静かに座っている」のような寂れた世界観の中でスタンド・バイ・ミーのようなライティングでタルコフスキーのストーカーのようなゾーンを現出している作品に感じました。

この映画では現代で測量士として活動するハオの日常生活と日記の中で想起される同名ハオの回想の2つの目線で語られるが、興味深いのは互いに行動が共通している部分があることだろう。
面談に来た女の子と一夜を共にして朝食で食べるゆで卵の皮を剥いて渡す現代のハオ⇔鳥の巣をつっついて落ちた卵を回収する過去のハオ
測量士として映される現代のハオ⇔好奇心で映される過去のハオ

本作は2者の出来事を地続きにしつつも異なる出来事を交差させたり、あえて引き離したりとする。
それによってハオの出来事と別人ハオの出来事をあたかも同一人物のように映していると思わせるように感じました。

が、本作が面白いのは2人のハオが同一人物であると繋げずに、2者の行動と共通点を通じて地方都市の魂が輪廻するように昇華したところにあると思う。

地方都市そのものがタルコフスキー「ストーカー」のゾーンの様に映して、都市の営みが輪廻転生する錯覚を与えるのだ。
時制を地続きにする事で都市の営みが輪廻転生していき、土地に染み付いた魂の残り香をハオを通じて想起させるファンタジーさにこそ本作の不思議な魅力が詰まっていると感じました。

都市の生命は人々の営み・人口をそっくりそのまま反映し、鬼城になりつつある世界の中で無邪気に生きる姿を描く。
けれども、鬼城へ進むにつれて都市のHP減少と人間の不在をリンクさせていき、人間の運命と都市の命を結びつける怪作に感じました。
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