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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊のsoのレビュー・感想・評価

3.5
エンドロールが流れ、こんなにも楽しさと寂しさの両方で胸がいっぱいになる映画はなかなかない、と思った。
すべては終わりゆく。始まったからには。
だから、泣くな。この部屋では。

もし実在していたならばフランス語を読めないのに買い揃えたくなったであろうとっても魅力的な雑誌「フレンチ・ディスパッチ」。
その編集長が逝去し、突如廃刊が決まった「フレンチ・ディスパッチ」最終号の記事がオムニバス形式で紹介されてゆく。

光が強くなればなるほど、影は色を濃くしてゆく。
新鮮な映画の構成や、洗練されたカメラワーク、シャレの効いた演出や台詞、最初から最後まで五感を存分に楽しませてくれるエンターテイメント性を光としたら、記者や、彼らが最後の「フレンチ・ディスパッチ」に刻み込むために見つめた人々の抱える孤独が影だ。
彼らが渦中にいた事件や出来事が一見終焉を迎えたように見えても、記事が書き終えられたように見えても、彼らの孤独は一生続いてゆく。
軽快なリズムとメランコリックなメロディ、光と影の間を縫いながらもまだ歩き続けねばならない彼らの最後の表情が胸に残る。

演者も皆とても良かったけど、フランシス・マクドーマンドの静かな演技にはやはり引き込まれるものがある。
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