牛猫

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊の牛猫のレビュー・感想・評価

3.0
20世紀フランスの架空の街を舞台に、ある雑誌の最終号にまつわる編集者と記者たちのドラマを描いた話。

ウェスアンダーソンらしい独特の世界観や時代設定を反映させたセットのような街並みの雰囲気は見ているだけで満足できる。次から次へと出てくるお洒落な画面の構図に心を掴まれることが多々あった。
持ち味である鮮やかな色遣いを発揮しつつ、モノクロのパートがあったり、アニメーションがあったり、これまでとは一味違う趣向を凝らした映像も観ていて楽しい。
ウェスアンダーソン作品常連のビルマーレイやティルダスウィントンに止まらず、フランシスマクドーマンドにティモシーシャラメ、シアーシャローナンと老若男女問わずこれだけ豪華な俳優陣を揃えられたのも凄い。名のある俳優たちがかなり贅沢な使われ方をしているのも見どころの一つかもしれない。

しかし、肝心の物語がつまらない。
大きく3つのパートに分けたオムニバスだけど、これといって心に残るものがなかった。それぞれの世界観や美術は文句なしに素晴らしいのだけど、どれも説明的なセリフが多くて話が入ってこない。2章の学生運動はファッションや音楽が好きだっただけに、字幕を追うのに疲れてしまって眠くなるし、消化不良だった。苦労して追いかけた割にはそこまで心に刺さるわけでもなく、なんとなくしんみりして終わってしまった感じ。

ウェスアンダーソンの世界観は好きだけど、この作品に関しては退屈さのほうが勝ってしまった。
牛猫

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