バランスの悪さが魅力的
昔から感じていることだが、三池崇史監督は、作品ごとの質にムラがありすぎる。逆にいえば、脚本やスタッフに左右されやすいのだと思う。
多作なこともあり、体感的なヒット率は2割くらいだが、たまにホームラン級の作品を生み出すから侮れない。
『初恋』は、そんな監督の作品のなかではかなりの当たりだろうと思う。「キャリア初のラブストーリー」などとふざけたキャッチコピーだが、純度100パーセントの、三池監督の映画であることだけは間違いない。
象徴的なのは、中盤以降のホームセンターのシーンで。異様なテンションの高さは『悪の教典』に匹敵するものがあった。
役者陣では内野聖陽が群を抜いて魅力的。フェロモン全開の色気は、観ているだけで幸せなカッコ良さ。
文春砲に完全にやられたのか、ベッキーの怪演や窪田正孝のストイックな演技も映画にピタッとはまっていて、役者がのびのびと演じているのはとてもよかった。
三池監督の映画はどれも映画全体のバランスがとても悪く、それが映画の出来を左右していると個人的には感じているが、今回はその歪さが逆に魅力的に機能している。