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家族を想うときのyumeayuのレビュー・感想・評価

家族を想うとき(2019年製作の映画)
4.0
"不在票"

いまや何でも欲しいものはインターネットで簡単に手に入るようになった。
しかし、当然ながらその商品を受け取るには配達が必要な訳で。となると、そこには当然人手が必要な訳で…。

便利な世の中の影に潜む、リアルな社会問題がテーマとなっている今作。イギリスで問題となっているゼロ時間契約労働者の厳しい現状が描かれている。

今作に登場する主人公一家は、どこにでもいる労働者階級の家族だ。
生活は決して楽ではなく、少しでもお金を稼ごうと夫婦共働きで頑張っている。
しかし、頑張れば頑張るほど家族との時間は失われ、気持ちはすれ違ってしまう。
彼らは決して贅沢をしたい訳ではない。ただ、普通の暮らしがしたいだけなのだ。
それなのに会社から理不尽な要求をされ、全てが悪い方向へ転がってしまう。とにかく何をしても悪循環に陥ってしまうのだ。
それでも力を振り絞り仕事に励む彼らの姿を見ているのはホントに辛くて、「もう勘弁してあげて」と何度も悲痛な気持ちになってしまった。

本来、仕事とは何のためにするものなのか?
家族との時間を割き、健康を犠牲にしてまでやらなければならないことってあるのだろうか?
親が希望を見出せない世の中に、子供は何を期待するのだろう。

格差社会はもはや世界共通の問題となっている。彼のような暮らしをしている人は日本にもたくさんいることだろう。
理不尽な世の中に警笛を鳴らす意味でも今作は今見るべき作品だと思う。
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