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BEYOND BLOODの消費者のネタバレレビュー・内容・結末

BEYOND BLOOD(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「マーターズ」や「屋敷女」、「ハイテンション」等を生み出したムーブメント、“ニュー・ウェイヴ・オブ・フレンチ・ホラー”を諸作品を手掛けた監督達や映画関係者、評論家等のインタビューによって全貌を紐解いたドキュメンタリー作品

前半は作品がどれだけ素晴らしいかを語るばかりで冗長に感じたか中盤あたりからは知られざる事実や作品の本質について興味深い物が多く楽しめた

極めて凄惨な描写とその背景となる悲劇の強烈さで知られる「屋敷女」の撮影時の空気が非常に明るく冗談の飛び交う現場だった、というエピソードはスラッシャー映画あるあるながら作品が作品なだけに安心感を覚えた
他にもカンヌは映画祭で有名だが普段はむしろそういった文化資本の乏しい環境だった、このムーブメントはフランスのテレビ局カナルプラスの企画と出資による物だった、フレンチホラーはフランスでは無視され続けた、などの話があり特に一つ目と三つ目は意外性があった

作品の世界観や作風に関してもフランスの語られる事の少ない辛い歴史が物語に与えてきた影響やアメリカのホラーとの相違点を通して主人公及び悪役の性質が語られていたのもなるほどなぁ、と
言われてみれば女性がメインとされる作品が多いしアメリカ映画では幸運によって生き残る事が多いのに対してフレンチホラーでは生き残り方を最初から知っていて力強い、とか単なる暴力表現やゴアではなくそれらがストーリーと相互作用を持っている、といった指摘もそれを意識した上で今後はフレンチホラーを観ていきたいなぁと感じた
現実的でアートな作風の物が多くキャラクターの心理面を重点的に描いている、というのもまさに自分がフレンチホラーが好きな理由だしフェミニズムが強く意識されているという点も世界中のホラー映画において意識されるべき事だよなぁ、と

ムーブメントが発生した時期が911の後だった、という事から現実社会で起こった悲劇や社会情勢がホラー映画に与える影響について語っていたパートもフランスに限らずジョーダン・ピール等の現代ホラー監督にも該当する事で社会派ホラーを改めて好きになった

後は盲点だったがフランスはそもそもグランギニョルを生み出した国でありフレンチホラーとも深い繋がりがある、という事も示されていたがやはりそういうその国の古典文化や伝統による影響というのは上手くやれば素晴らしい作品を生み出す助けになる要素だし日本もかつての「リング」シリーズに代表されるJホラーがそうだった様にそれをまた活かしていって欲しいなと感じた

「RAW」について語るパートで出て来た「少女が女性になる過程で起こる事が世間では“殺菌”されているがそれがRAWではちゃんと描かれている」という話も改めて色々考えるきっかけになった

そしてやっぱり「フロンティア」観てみたいなぁ、と
配信に無いからまだ観られてないのでどこかしらお願いします…
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