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糸のtetsuのレビュー・感想・評価

(2020年製作の映画)
3.5
友人に誘われ、鑑賞


[あらすじ]

幼少期に運命的な出会いを果たした1組の男女。
とある出来事により、離ればなれになってしまった2人だったが、運命は再び彼らを引き寄せる。
中島みゆきさんの名曲と共に、平成という時代を懸命に生きる人々を描いた恋愛ドラマ。


[感想]

上映されたのち、かなり、意見が割れていたので、気になっていた本作。

実際に観てみると、ぶっ飛び要素と感動要素が絶妙なバランスで同居していて、どのように評価するべきかよく分からない問題作でした。


※今回のレビューは、かなりネタバレが多いです。
今後、鑑賞予定の方は、観賞後に読むことをオススメします。


[突っ込みどころの多い序盤]

恋愛ドラマでありつつ、ファンタジー的な設定が多い本作。

正直、かつてのケータイ小説、もしくは、一昔前の少女漫画実写化かというぐらい、浮世離れした展開が繰り広げられる序盤には、かなり、穿った見方をしてしまいました。

「お前のことは俺が守る!!」な主人公・漣や、綾波レイのように眼帯を着けるヒロイン・葵。

そんな彼らが無謀な駆け落ちをした結果、『秒速5センチメートル』みたく、凍てつく小屋の中で一泊し、分かりやすく、パトカーと警察に引き離されるオープニング。

あくまでフィクションの物語なので割りきって観るのが正解だとは思うのですが、ある程度のリアリティを求める自分としては、かなり観ていて、乗り切れないものが……。

その他にも、主人公が、結構な太さのミサンガを数年間ずっと手首に着けていた設定や、幼少期、ヒロインに着けてもらった使用済み絆創膏をずっと保管している設定などなど。

過剰に美化されている要素に、若干の気持ちの悪さを抱えてしまい、死んだ目で鑑賞してしまった僕には、心の中で乾いた笑いが起きていました……。(←コイツ、純粋な心を失ってやがる。笑)


[絶対に笑ってはいけない斎藤工]

そして、最大のツッコミポイントは、斎藤工さんのキャラクター。

いつも通り、2枚目のキャラクターで登場したのかと思いきや、繰り出される奇行の数々。

・ヒロインの横で、突然、ゲップをする。
・事業の失敗から姿を消したと思えば、「実写版『るろうに剣心』のキャラクターかっ!」とツッコミたくなる出で立ちで、沖縄ライフを満喫している。
・そんな中で、特に反省もせず、ヒロインに「踊れ。」と声をかける。

上記のような奇行を見ていると、普通に年末のお笑い特番時の斎藤工さんを思い出してしまい、申し訳ないのですが、若干、笑ってしまいました。


[予想以上に盛り返す後半]

その後も、余韻がないカットの繋げ方や、「もっと広い世界で生きていたい」という趣旨の発言をした後、一気にシンガポール進出するヒロインなど。

テレビ東京が本気で作った「キス我慢選手権」か……?と頭を抱えるトンデモストーリーに翻弄されながらも、終盤は、謎の追い上げをしてくるのが、すごい。

平成に起きた"ある出来事"を描いたり、中島みゆきさんの"もうひとつの名曲"を使用した見事な歌唱シーンが登場したり。

特にクライマックスは素晴らしく、2時間ちょっとの尺の中で、十数年を描いた映画だからこそのドラマティックな展開には、確かに、心を揺れ動かされる部分がありました。


[終わりに]

そんなこんなで見終わった直後の感想は、良い映画だったということに間違いはないですが、落ち着いて考えると、必ずしも、そうではなかったようにも感じる本作。

どちらかというと、ダメ邦画の枠組みに近い作品のようにも思いましたが、だからといって、一概に否定は出来ない不思議な作品でした。

P.S.
個性豊かなキャスト陣の出演も見所となった本作ですが、一番、豪華な使い方をされていたのは、インディーズ映画界ではお馴染みの和田光沙さんと二ノ宮隆太郎さんでした。出演時間、マジで一瞬すぎる……。笑
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