ひゅうどんこ

生きるのひゅうどんこのネタバレレビュー・内容・結末

生きる(1952年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

死に向き合えば何でも出来る、たらい回しもやーさんも何のその。


辞書を引くより分かりやすく、たらい回しを描いています。

雨が降ると下水が溢れ、この上なく汚なく臭い空き地を、綺麗にしてもらって、子供のための公園を作って欲しい。

そんな陳情に来たおばちゃん達を、行く先々の担当者は体よく追っ払って、違う部署に押しつけるのでした。

市民課

土木課

公園課

受付

衛生課

衛生課環境衛生係

予防課

予防課防疫係

予防課虫疫係

下水課

道路課

都市計画部

区画整理課

警察署

児童福祉係

町の有力者

次期市長候補の助役

市民課....あっ、また戻ってますやん(;-_-+

何だか、似た光景は、聞いたり目にしたことがありますね。

同義語に、責任の擦り合いという言葉もありますねぇ。


さて、映画に正義のヒーローは付き物であります。

ただ、この映画のヒーローである渡邊市民課長の他と違うところは、末期の胃癌に冒されて、生きていられる残り時間が殆ど無いことです。

死に向き合うことで、生きるということを理解した彼は、文字通り、死に物狂いで、公園設立にむけて働き始めます。


この映画には、幾つもの名場面がありますが、私はやーさんと渡邊課長のやりとりが印象に残っています。

空き地を整備されると不都合な人間が、やーさんを使って渡邊課長に脅しをかけます。

「お前さん、大人しくしといた方がいいぜ。命がおしくねぇのか!」

この恫喝に、渡邊課長はニヤリと笑うのみ。

それだけで、やーさんを追い返してしまうんです。

生きようとすることは、何て強いことなんだろう、と驚かされるこの映画。

その強さの前には、たらい回しであろうが、やーさんであろうが何のその。


真面目な話、この映画を観た後は、生と死を素直に見つめ直すことが出来ます。



───以上、
10年以上前にブログに書いていた映画評から転記🤦