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生きるのkoyaのレビュー・感想・評価

生きる(1952年製作の映画)
5.0
黒澤明監督の映画は、銀座の並木座とか池袋文芸地下で特集上映よくありましたから、身近な監督でした。
でも、その分、今になると観たのが、昔過ぎちゃって忘れてる・・・というのが多いですね。

『生きる』は、黒澤監督の現代ものの映画の中では一番と言われています。海外での評価はとても高いです。
胃がんで余命いくばくもないと知った、それまでは、お役所仕事に染まって事なかれ主義だった主人公(志村喬)が、命をかけて下水地域に小さな公園を作る・・・という物語は有名で、私も覚えていたのですが、改めて再見してみると、公園造りの部分ってすごく短いんですね。

役所を無断欠勤して、銀行でお金をおろして、なんとか気を紛らわそう・・・と飲めない酒を飲んでいると伊藤雄之助演じる、遊び人らしい小説家と出合ってあちこち、連れまわされる所が前半。
昭和27年当時の東京の盛り場の風景が、とてもアメリカナイズされて誇張されているのね。
盛り場を転々としても、気が晴れない、それに反比例するように、躁病的に賑やかな盛り場。

特に、「何か作ったら?」という一言で、はっと目覚める時のレストランで上流階級らしい若者たちの誕生日パーティが開かれている。
それが、まるでアメリカの映画みたいだなぁ・・・というキラキラぶり、はしゃぎぶり、戦後の日本に落としたアメリカの力みたいなものを痛感しましたね。

そして、以前はたらいまわしにしていた「公園作り」に執念を燃やし何があっても負けない、あきらめず、孤独な戦いをするのですが、それも死後のお通夜の席での回想シーンになっていて、露骨な行動みたいなものは、慎重にフィルターを通しているんです。

いい映画は時代関係ないですね。今回、再見してみて良かったし、なんとなく、「日本、全然変わってないな・・・」とも思う。
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