かんげ

EXITのかんげのレビュー・感想・評価

EXIT(2019年製作の映画)
3.6
青山シアターのオンライン試写会で鑑賞。 宣伝の中で、「新感染 ファイナル・エクスプレス」の名前が出てきますが、共通点は「パニック」というところだけで、まったく違うジャンルの映画。期待のしどころを間違えると、「何じゃこれ?」となりそうです。

主人公は、元山岳部員のダメ息子ヨンナム。お父さんの古希祝いのパーティー会場で、中毒ガステロに巻き込まれ、その会場の副店長で山岳部時代の後輩女性ウィジュと協力して、脱出を図るという物語。

私たちは、観る前に、この作品が「高層ビル有毒ガスパニック映画」であることが分かっていますから、冒頭のシーンで、「なるほど、この能力が後々活かされるわけね」とワクワクしつつ観始めます。

最初は、「前半が家族のドタバタコメディで、そこからシリアスなパニックアクションになるのか」と想像しながら観ていましたが、危機が迫ってきても、全然、シリアス方面に向かいません。全編アクションコメディだったんですね。パニックもので、こういうノリというのは、珍しいかもしれません。

「鍵がなければ、外からしか開けない屋上ドアって、なんだよ? 泥棒入り放題じゃないか」とか思ってはいけないのですよね。かと思えば、事前にウェルカムボードにいたずらしようとする子どもたちのシーンを何気なく入れておいて、その後にあるアイテムが出てくるという、丁寧な作り込みもあったりします。なかなか不思議なバランスです。

基本的には、「ダメ人間と思われてた人間の、役に立たないと思われた能力が活かされる話」ですから、応援するしかありません。モードが切り替わるシーンとしては、デッキブラシとクロスで、2人で言葉も交わさずに、スタっと担架を作るところ。「よっ、待ってました」です。2人にとっては特別なことではなく、そして、気持ちも通じ合っている、印象的なシーンでした。

この手の物語にはお約束の、「自分だけ助かりたい人」も出てきます。その人の立場を踏まえると、このキャラクターにはセウォル号の船長を重ねているんでしょうね。しっぺ返しは期待通りですが、彼はもうちょっと酷い目にあってもよかったのに…。

ラストは、ほどよい感じだとは思いますが、それまでのノリを考えると、例えば「危機管理コンサルタントとして起業して、生配信で注目されたこともあって、大成功している」みたいな、度が過ぎたハッピーエンディングでもよかったかな、と思います。

エンディングテーマを聴いていると、「あれ?、このリズムって、もしかして…」と思っていたら、その通り。シャレが効いていて、このお遊びにもサムズ・アップでした。

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