良かったとこ1 映画として公開できていること
見てあらためて思うのは、この映画が完成したことが一番すごい。主観形式で作られたドキュメンタリー映画として普通に鑑賞できること自体が異常で、撮影に使われた3台のスマホは途中で没収されることも故障することもあり得たし、この家族が離れ離れになって3つのスマホの動画が集められないことも十分あり得た。
普通のドキュメンタリー映画に見えれば見えるほど、背景を考えたら空恐ろしくなるという珍しい体験。
良かったとこ2 あえて普通の生活のシーンにこだわっている
不法入国するシーンやヘイトクライムに遭うシーンもあるけど、映画の大部分はホームビデオ的なシーンばかり。長女がマイケルジャクソンのBlack or Whiteにあわせて踊るシーンのような、テーマ的に重くもなるけど本人は楽しんでやっているのが見てとれるシーンが積み重なっているのが良かった。
ダメだったとこ 作家としての視座への踏み込み不足
危険な状況でも何故撮影し続けたのか。後半に作家的な欲望と葛藤するナレーションがあるけど、映画になる可能性もわからないのに何故撮り続けたのかという根本にはたどり着かないので、全般的には難民申請の行方を淡々と追いかけるだけに止まってしまっている。
