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権利への階段のmaverickのレビュー・感想・評価

権利への階段(2017年製作の映画)
4.3
2017年のドイツ・ベルギーの映画。アメリカの精神科医療を改善させるきっかけになった「エレノア・リース判決」の実話に基づく物語。


ヘレナ・ボナム=カーターと、ヒラリー・スワンクの共演作。この二人だからこその深みのある演技に引き込まれる。法廷ものかと思ったが、それよりは二人の絆を描く人間ドラマといった感じ。心に響く上質な作品だ。

ヘレナ・ボナム=カーターは、妄想型統合失調症と診断された患者を演じている。この人の演技力は本当に凄い。奇抜なキャラクターから、落ち着いた女性の役柄まで自由自在に演じることが出来る。本作でもその演じ分けが見事であった。ヒラリー・スワンクは彼女を担当する弁護士の役。抑えた演技の中にも彼女の巧みな演技力がはっきりと見て取れる。2度のアカデミー賞主演女優賞獲得は伊達ではない。演技力があって自分は大好きな女優さんなのだが、近年はどうも作品に恵まれない。作品次第では3度目のオスカーも狙えると思うのに。本作でも貫禄の演技を披露しているのだが、作品が地味だからだろうか。もっと脚光を浴びてもいいと思うのだけどなぁ。

「エレノア・リース判決」は、その後のアメリカの精神科医療を大きく改善させた。それまでは同様のケースで裁判を起こしても勝つ見込みがなく、被害者は泣き寝入りだった。本作を観れば、この裁判がいかに困難であったかがよく分かる。それでも信念の下に諦めず戦った二人には頭が下がる。世の中がより良くなってゆくのは、こうした先人たちのおかげなのだ。


基本的人権についても考えさせられる。人が人らしく生きることは誰にも奪われてはならない。エレノアは、ぱっと見は嫌な人に見える。でも実は愛に溢れた優しい女性だ。敵意を向けられるから相手も攻撃的になる。人と人が優しく接し合える社会であれば、こんな悲劇も起こらないのになと思う。
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