tetsu

ソワレのtetsuのレビュー・感想・評価

ソワレ(2020年製作の映画)
3.9
一般公開時には見逃していたものの、独立系ミニシアターで再上映されていたため、鑑賞。


[あらすじ]

役者としての成功を夢見る青年・翔大と介護老人施設で働くタカラ。
偶然、出会い、共に逃避行を繰り広げることになった彼らに待ち受ける運命とは……。


[感想]

鑑賞中は、総じて、あと一歩というもどかしさを抱えていたけれど、ラスト10分からの追い上げがすごい。

凡作が秀作へと引き揚げられる瞬間を、まざまざと見せつけられた。


[外山文治作品として]

どうにもならない現実をもがく主人公や、男女の逃避行というのは、監督の他作にも頻出する題材。

それ以外にも、介護という要素は『此の岸のこと』を思わせるし、攻めた性描写は『海辺の途中』にも通じているような気も……。

これらのことからも、近年、多くの短編映画を手掛けてきた監督だからこそ撮れた、一旦の集大成のような長編だと感じました。


[おわりに]

物語の突っ込みどころは多々ありながらも、主演・芋生悠さんの熱演もあり、鑑賞後には、とてつもない満足感が残る本作。

「たとえ、不器用な作りでも、わずか1シーンが誰かの人生を救うかもしれない。」

そんな監督の映画観が、作品を通して伝わってくるため、最後には愛さずにはいられなくなる作品でした。
tetsu

tetsu