一般公開時には見逃していたものの、独立系ミニシアターで再上映されていたため、鑑賞。
[あらすじ]
役者としての成功を夢見る青年・翔大と介護老人施設で働くタカラ。
偶然、出会い、共に逃避行を繰り広げることになった彼らに待ち受ける運命とは……。
[感想]
鑑賞中は、総じて、あと一歩というもどかしさを抱えていたけれど、ラスト10分からの追い上げがすごい。
凡作が秀作へと引き揚げられる瞬間を、まざまざと見せつけられた。
[外山文治作品として]
どうにもならない現実をもがく主人公や、男女の逃避行というのは、監督の他作にも頻出する題材。
それ以外にも、介護という要素は『此の岸のこと』を思わせるし、攻めた性描写は『海辺の途中』にも通じているような気も……。
これらのことからも、近年、多くの短編映画を手掛けてきた監督だからこそ撮れた、一旦の集大成のような長編だと感じました。
[おわりに]
物語の突っ込みどころは多々ありながらも、主演・芋生悠さんの熱演もあり、鑑賞後には、とてつもない満足感が残る本作。
「たとえ、不器用な作りでも、わずか1シーンが誰かの人生を救うかもしれない。」
そんな監督の映画観が、作品を通して伝わってくるため、最後には愛さずにはいられなくなる作品でした。