Kamiyo

ブラック・レインのKamiyoのレビュー・感想・評価

ブラック・レイン(1989年製作の映画)
3.8
1989年”ブラック・レイン” 監督 リドリー・スコット
先日のNHKBSにて再見です
本作は語るべき点多いが、やはり一番はこれに尽きる。
松田優作。
『ブラック・レイン』が劇場公開日
1989年10月7日された、1か月後に
1989年11月6日。
俺達の大事なスターが、松田優作が死んだ。
俺と同じ年代だ。。。
「探偵物語」が終わってから約十年。
実は、その頃、俺にとって松田優作は
「過去の人」だった。
「野獣死すべし」以降の松田優作は、アクションを
封印し、ひたすら、普通の役をやっていた。
「家族ゲーム」以降は映画館で観る事もなくなった。

”太陽にほえろ”のジーパン刑事や、”大都会 PARTII”の
徳吉刑事や”遊戯シリーズ”鳴海昌平や、『探偵物語』工藤俊作で育った俺達には、松田優作がその人だったのだ。
そんな時、優作がアクションに戻って来たとの知らせ、
監督は「エイリアン」「ブラックホークダウン」
「ブレード・ランナー」のリドリー・スコット。
ショーケンも、オーディションを受けていた
という噂も飛んだ。
圧倒された、100%松田優作の映画だった。
高倉健も、アンディ・ガルシアも、マイケル・ダグラスも、ただ、華をそえたに過ぎない。
「これからは、ハリウッドで優作のアクションが観れるぞ!」
皆、そう信じていた矢先・・・飛びこんだニュース。
松田優作が死んだ夜、俺は悲しみに沈んが
「人は皆、いつか消えちまうんだ。」
あれから、40年だよ・・・・
もう、優作の倍近くなった、長生きしてる俺。
この映画を観る度に、「しっかり生きなきゃな」と、
キツクなる体を奮い立たせている。

マイケル・ダグラス演じるニューヨーク市警の
はみ出し刑事ニックと、アンディ・ガルシア演じる
相棒のチャーリーが、大阪を舞台に松田優作演じる
凶悪犯の佐藤を追う。共に犯人を追う大阪府警の
松本警部補を高倉健が演じている。

ヤクザの出入りの結果であるにせよ殺人犯で
逮捕された殺人マシーンの佐藤を日本領事館員が
NY警察から受けだす理由が彼は大使館員だと
いうのでは出だしから目茶苦茶な設定で驚かされる。
更にそれに輪をかける様に、大阪に着いた機内で
偽警官たちにいい加減な書類で引き渡してしまう
アメリカの刑事のニックとチャーリーの二人の
間抜けぶりは、悪いコメディのネタになる
お粗末さである。
日米の文化の違いによる、ニック(マイケル・ダグラス)と松本(高倉健)の捜査方法の違いも物語を左右する。
目的のためには手段を選ばないニックに対して
松本はあくまでもチームの一員として、和を重んじる。
当初は何かと対立する二人だが、徐々に理解し合うようになり、最後はニックも和の精神を身に付ける。
二人に芽生えた友情もすがすがしい。

健さんが歌う「What'd I Say」ハスキーな声で
レイ・チャールズに負けず劣らず??

日本の描き方が相変わらずアメリカ人が思う
日本像に当てはめ過ぎる嫌いはあるが、
それでも骨太なストーリー展開は見応え十分。

とにかく松田優作の演技は必見。
マイケル・ダグラス、高倉健を凌ぐ圧倒的な存在感。
ぶっちゃけ高倉健の印象はかなり薄いが
松田優作のあの存在感があってこそ本作は
成立していると言っても過言じゃない。
これで彼が見納めかと思う
周知の通り、本作撮影前にガンである事が判明。
治療に専念すれば命は助かっていたかもしれない。
それはつまり、本作への出演を断念する事。
遂に掴んだハリウッド・チャンス。
無論、選んだのは…。
治療より本作への出演を優先したそうな…。
治療に専念して欲しかったとか、
命を捨ててまで本作に出演した役者魂とか
どっちが良かったかとか誰にも決められない。
松田優作が自身で選んだ運命。

病的な感じが佐藤のキャラを一層狂気的にし
彼以外には演じられなかったであろう唯一無二の
ものになっていたのは、決して過言では無い。
激しいアクションもスタントの吹き替えなしに
演じて,全身の贅肉をそぎおとした
カミソリのような体躯で、
正に鬼気迫る演技が凄まじい。
本当に、憎たらしい佐藤が乗り移ったようだ。
いや、佐藤そのものが松田優作
残念ながら40歳の若さで亡くなっている。
本作が遺作になるのだが、驚くことに
ハリウッドで活躍できたであろう数少ない
日本人役者だけに、ほんと勿体ないなと。
ご存知松田優作の最後の映画作品です。
最後の瞬間に眩いばかりの閃光を残しました。
まさに伝説…

ラストのマイケルダグラスと松田優作の
バイクチェイスと死闘もかっこよかったです。
特に、松田優作の狂犬ヤクザっぷりが
カッコ良すぎます。
若山富三郎親分と偽札の原盤と引き換えに
自分の縄張りを交渉する時も、
若山親分が「ワレ歳なんぼじゃ?もうちょっとは長生きしたいのと違うか?」と威嚇すると
松田優作が「あんたほど長生きするつもりはないぜ」と
威嚇しかえす大人げなさすぎな狂犬っぷりが
カッコ良すぎます。
Kamiyo

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