優しいアロエ

ブラック・レインの優しいアロエのレビュー・感想・評価

ブラック・レイン(1989年製作の映画)
3.8
〈『黒い雨』の同年に〉

 太平洋戦争によって振り出しに戻った日本とアメリカの関係。云わばその「黒い雨以降」についての、アメリカ人の独自解釈『ブラック・レイン』。
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 日本の警察、アメリカの警察。二者の共同捜査の過程は、いがみあい・貶しあいのディスコミュニケーションだ。高倉健とマイケル・ダグラス、どちらもプライドの塊だから、先を越されまいと火花を散らす。逃亡した中堅ヤクザには晩年の青キジだが、これも渋い。

 そして本作『ブラック・レイン』は、タイトルが示唆する通り、戦後のヤクザについての映画なのだとわかっていく。『酔いどれ天使』『仁義なき戦い』などからもわかるように、戦後日本では闇市が栄えるにつれてテキ屋が増加、治安の悪化もあってここから所謂ヤクザという形態が生まれていった。その責任の大元がアメリカにあると製作者が考えているのか知らないが、とにかく本作は、日本の手を借りつつも、“アメリカが” けじめをつけるような形で事件の解決へと向かっていく。

 とはいえ、アメリカが助けてやっているのだというような押しつけがましさが本作にないのは、まず高倉健のガイジン警察に引けを取らない存在感、そしてマイケル・ダグラスが政治的・社会的な考えや命令からではなく、あくまで個人的な思いからヤクザを追っているからである。

 ラストがまた素晴らしく、まず描かれるのは、日本とアメリカの言葉では括れない友情。そして、最後の手柄を日本に立てさせることによる「あとは任せた、自分の国は自分で守っていけ」というメッセージであった。
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 ハンス・ジマーが作曲を務めており、「ダークナイト三部作」とよく似た劇伴だった。
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