噛む力がまるでない

モータルコンバットの噛む力がまるでないのネタバレレビュー・内容・結末

モータルコンバット(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

 原作の対戦ゲームで遊んだことはなく、90年代に作られた映画2作も未見である。まったく基礎知識を入れずに見ても、高い志のあるジャンル映画なのはよくわかるし、カルト映画化しそうな趣もある。大多数が白人以外のキャストで占められているという意味でも逞しい。

 脚本がいろいろスカスカなのはまあご愛嬌として、原作のキャラクターたちをたっぷり見せきっている演出はうまくいってると感じた。中でもサブゼロとスコーピオンに関してはキャラクターの作りがしっかりしており、完全に魅力が爆発している。サブゼロは言葉少なで大きな存在感を持ち、スコーピオンの真田広之の殺気は凄まじいものがある。個人的に、シャン・ツンを演じるチン・ハンがハマってるようでどこかギャグっぽく見えたりで、よくわからないけど変な魅力があってよかった(いうまでもなくチン・ハンは良い俳優である)。
 しかしながら、コール・ヤングが主人公にしてはかなり魅力がなく、微妙に強かったり弱かったりでカタルシスがない。彼は映画オリジナルのキャラクターらしいのだが、造形不足というか、まわりに食われたというか、これだけ濃いメンツの中ではちょっと不利かもと思った。

 ソニア・ブレイドのストーリーに注目して見てみるとなかなか見ごたえがあって、魔界戦士との決戦ではミレーナとのありがちな女性対決……ではなくカノウとの戦いが待ち構えている。すでにマークを持ち、直情的な怒りの感情で能力を得たカノウを血統でもないマークすら持たないソニアがホームの地の利を活かして倒すのは、血筋なんて関係なく人は強くなれるというメッセージが込められてるんじゃないかと思う。この映画もまた血統主義が敷かれてはいるが、サブエピソードでこういったキャラクターを置くのは非常に大事である。