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ケイトのrayconteのレビュー・感想・評価

ケイト(2021年製作の映画)
5.0
「日本を舞台にしたアメリカ映画大体クソ」とは、たいていの映画ファンがもはや批判するのもどうかというほどの諦めを抱いているところだろう。

だが、アメリカも変わった。
多様性を重んじ、異文化のアイデンティティを理解、尊重することが社会の基本教養となった。
2010から2020の10年間は「多様性」の歴史的転換期だと言える。
映画界においても、黒人をコメディリリーフ扱いすることや、アジア人の役を白人にすげ替えることも少なくなり、白人による文化の履き違えを笑いに変えるようなこともなくなった。
日本を舞台にした、あるいは日本文化を扱った作品は数多くあるが、ずいぶん質はよくなった。

だが…ここにきて、2021年にもなって、とんでもねーやつが現れた!!
もはや旧時代の遺物と化した「アメリカン勘違いニッポン」を恥ずかしげもなく扱うウルトラB級イモ映画、それが「KATE」だ!


まずこの映画、「KATE」じゃなくて完全に「KITE」じゃねーか!!
殺し屋とそのブリーダーって設定、そのラストまでバッチリパクってんな!

バニラの街宣が工業地帯走ってたら目立って仕方ねーし、東京にもう族車は走ってねー!
夜遊びしたいヤツらはアイドルバンドのライブに集まんねーし、クラブじゃフツーにアメリカの音楽を聴いとる!
百歩譲ってヤクザの存在は許すとしても、芸者と神楽セット売りする店なんか見たことねえ!
あと「放射性物質盛られる」ってなんだ? ここはロシアか? それと放射性物質が体内にあんのにちゃんと血が止まるのはなんでだ? そもそも殺すだけなら普通の毒でいいだろうが!
そんでラストに何が「福」じゃい、やかましわ!

他にもツッコミどころは盛りだくさん。
この映画マジで変なとこばっかで、気づけば僕は…最後までしっかり観ていた。
アレ? 色々文句言ったはずなのに結構楽しかったな。

まああれこれ言ってきたが、結局こういう映画はこの「ツッコミ」こそが醍醐味なのだ。
洗練されたものが喜ばれ、そうでないものが叩かれる今の時代において「KATE」のような映画は減っていくだろう。
だが、誰かがそれを好きだと言うのなら、たとえその作品が時代錯誤だとしても、作られ続ける価値があるのだと思う。
少なくとも創作物の中では、どんな表現もどんな描写も許されるべきだ。
それこそが、本当の「多様性」だから。
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