華麗なる加齢臭

KCIA 南山の部長たちの華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

KCIA 南山の部長たち(2018年製作の映画)
5.0
【2時間で「麒麟が来る」を見事に超越】
昨夜(1月31日)観たNHK大河ドラマ「麒麟が来る」では、明智光秀がいよいよ本能寺の変を起こす前夜であった。本能寺の変は言わずもがな、日本人であれば誰もが知る「謀反」劇だ。

この作品、「KCIA南山の部長たち」も、君主が一番に思っている忠臣による謀反を描いた作品だ。そして謀反で暗殺される君主、朴大統領も織田信長も、独裁者であり暴君だ。

朴大統領は、この作品では直接描かれないが、国民に経済発展によるの生活向上を与えた代わりに、徹底して民主派を弾圧した。その姿勢は私と同年代以上の者であれば常識だろう。(まあ、社会に関心をもたず、歳をとっただけであれば常識でなないかも。あるいは若くても関心がある方には常識だ)

朴大統領は「民主主義」を否定し、織田信長は「信仰」に火をつけた。両者とも自身の目的のため、その時代における、「当たり前」的あるいはコモンセンス的なものを否定したのだ。故に、昨夜大河ドラマで描かれていた明智光秀の気持ちは、政権ナンバー2のKCIA第8代部長 金載圭をモデルとしたキム・ギュピョンの心境変化と殆ど変わることがなかった。どちらも、忠義を尽くしていたが、やがて裏切ざるを得ない気持になり「決心」することとなるのだから。

麒麟が来るの舞台と違い、この作品はわずか40年前のことであり、記憶がある分、誤魔化しが効かず再現性は難しい。にもかかわらずワシントンやフランスでのロケも含め、その再現性の高さは実に見事だった。
また政治ドラマを娯楽作品にするのは韓国映画の真骨頂でもあるが、一年間かけた大河ドラマの内容を、わずか2時間弱でテーマを含め見事に伝えることが出来る作品だ。

この作品が、韓国における興行成績1位であることに驚く。邦画で政治を扱った「新聞記者」は興行成績6億で、その年のベスト10にも入らない。あるいは貧困と家族をテーマとした「万引き家族」であっても当該年の4位だ。骨太な作品が敬遠されつづけた結果、アニメのクオリティの高いものの、邦画劇映画は2時間テレビドラマ級の作品ばかりとなってしまった。

2021年1月30日、復活したサツゲキで鑑賞