職人映画
長年、無冠の帝王だったハリウッドの名カメラマン、ロジャー・ディーキンスが『ブレードランナー2049』で悲願のオスカーを手にしたが、まさかこんなにも早く二度目の撮影賞を獲得するとは思ってもみなかった。
『007 スカイフォール』でもタッグを組んだサム・メンデス監督とディーキンスは、驚愕の「全編ワンカット」で観客を第一次世界大戦の中へ放り込む。
長回しワンカットは、アカデミー撮影賞を3年連続で獲ったエマニュエル・ルベツキが得意とする手法だが、ディーキンスは果敢にも困難な撮影に挑んでいる。
「擬似ワンカットであり、実際には複数のカットを繋いでいる」という声もちらほらあるが、本作を評価するポイントは「実際にワンカットで撮っているか否か」ではないと思う。
この作品が最も優れている点は、そうした編集点が極めて違和感なくシームレスに繋がれている部分で、観客はいつどのタイミングで何が起こるのか予測ができない。
そうした緊張感とアクションシーンが、ワンカット撮影に付加価値を加えていて、中盤の飛行機のシーンなどは一連の流れも含めて圧巻の一言に尽きる。
また爆発が起きようと、埃が舞おうと、水にダイブしようと、画面に水滴ひとつつかない完璧な撮影技術は、どうやって撮っているのかちょっと想像がつかない。
カメラが動き続けても、画面の隅々まで計算されていて色んなものが映り、そして動いているのも感動的。ストーリーに関して特に言及する点はない(そもそもそういう類の映画ではない)が、優秀なカメラマンと優秀な製作スタッフよる職人映画として比類なき完成度だ。