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ローズランドのRのレビュー・感想・評価

ローズランド(1977年製作の映画)
4.1
まったく前情報なしで見始め、オープニング、ダンスホールで多くの爺さん婆さんおっさんオバはんがダンスしてて、えええええダンスホールで踊る年配の人々の話? と、一風変わった設定と雰囲気に興味津々。男女でペアになって、向かい合って、手を取り、優雅に踊って楽しむ感じの社交ダンスで、これはもうほぼただの老人会。1977年、ニューヨークのダンスホール『ローズランド・ボールルーム』にて展開する3つのばらばらのストーリーが描かれていく。第一話ではメイというお婆さんが、夫との思い出に耽りながら、上手にダンスを踊ってて、そこにスタンといいう爺さんがやって来て、一緒に踊りましょうと、最初はスタンのことなんて半分無視で、頭の中は夫のことでいっぱい。ところがスタンと踊ってみると、踊ってるときにだけ、鏡の中に、若い頃の自分と夫が踊ってる姿が見える……というわけで、彼女は毎度スタンと踊りたがりはじめる。切なくもホッコリするストーリー。二話目は、デヴィッドボーイ風の若きチャラ男イケメンが三人のおばさんの間を行ったり来たりするという話で、このチャラ男くんを演じるのがなんとクリストファーウォーケン。昔はこんな美形やったんや、と驚きです。彼はポーリーヌという金持ち未亡人の情夫で、彼女の紹介で出会ったマリリンという女ともいい関係になっていくんやけど、このマリリンさん、もともと旦那に逃げられた女なだけあって、ウザさがすごい。ステディーな関係になるまでは、控え目で慎み深い女性なのに、いざ男女の関係になると、元々ある交友関係にああだこうだ口出しするようになり、交友関係を改めろ!と要求する。こういう風に他人との関係を自分の言いなりにさせようと強制する人ほんま無理!😅 で、チャラ男くんが最後に残酷なことして、はー、スッキリ✨ 二話目に出てくる黒人のダンサーめっちゃカッコよかった!そして三話目は、1話目を超える、さらなる年配ばあさんの話。目の周りに真っ青なアイシャドウを塗りたくってケバケバしい人なんやけど、気のいい婆さんで、いっぱい練習を重ねてピーボディー大会で優勝したいのに、ペアの爺さんがどうしても見た目もダンスもパッとしなくて、やいやいやいやい文句言って、けど何だかんだで好きなんやろなーというのが見てとれる。じっさの方は明らかにばっさが好き、けどまぁ情けない残念なおじいなわけです。で、そのダンスホールは昔っからある老舗で、来てる人々だいたいご年配なので、大会の優勝者がそのままぶっ倒れてご臨終になることもあったりする。あらまあ大変、一瞬騒然とするも、もともと皆さん片足棺桶なので、それほど動揺するわけでもなく。そんな終焉の影が、ふたりにもヒタヒタ近づいていくる、というお話。婆さんが、夢の中に出て来る王子様が、現実に現れるの!って言うて現れたのが、すげーモサイ男なのおもろすぎた😂 てな感じで、3話とも大した話ではないんだけど、細かくいろんな見どころがあり、ジワジワ面白くて、人生とは……としみじみ考えさせられる。自分が老人になったとき、この人たちみたいな人生でいいかな、最後の最後がダンスという娯楽でいいのかな、いろんな疑問が脳裏をかすめる、まぁ病院で管だらけよりはいいのか、とか、老人になっても、自分のことだけじゃなくて、人の幸せのために行動しながら死にたいな、とか、そんな具合に、自分の人生の終焉を考えさせる、深い余韻のある映画なんですね。エキサイティングさは皆無ですけど。ジェイムスアイヴォリーは本作を監督したときまだぜんぜん若者だっただろうに。よくぞこんな演出できたなー、と驚いた。映像も音楽もすごいクラシカル感とノスタルジア満載でやわらかい照明とソフトフォーカスがやさしい空気を作り出している。見終わったあとはじんわり?しんみり?いい映画を見たなって感じられる。こういう何でもない映画をいっしょに見て、見終わったあと、あぁ、あのシーンはこうだったね、そのシーンはあぁだったね、と語り合える人がいたらさぞ楽しいだろうなー、と思わせてくれる作品でした。普通の娯楽映画ファンには絶対に勧めれないけど、是非多くの人の感想がきいてみたい作品でした。不思議な気持ちになる一作。とてもよかったです^ ^
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