もものけ

マトリックス レザレクションズのもものけのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

預言者として人類の存亡を掛けた闘いの果に死んだネオは、何故かトーマス・アンダーソンというゲームメーカーの社員として生きていた。
するとまたあの違和感が訪れ、空虚なこの世界は自分の居場所ではないのかもしれないと疑問を感じ始めるのだった…。





感想。
映像がガラッと変わり、アクション要素も低く、前作トリロジーの焼き増しに見えて、失敗したリブート作品としてガッカリしてしまった意見が多い、ウォシャウスキー兄弟ではないラナ・ウォシャウスキー監督の単独"マトリックス"です。

キャラクターの役者変更と、時間が経ちすぎて年老いてしまったかつての主要キャラクターなどから、世界観へ入り込めず二番煎じの続編として眠くなった方も多いのではないでしょうか。

それもそのはず、この「マトリックス・レザレクションズ」は、ループするモーダルと呼ばれる別ウインドウでの出来事であるからです。
冒頭でトリニティーに似た役者が、何処かで見たようなシーンを、バッグス達が違和感を感じながら眺めております。
これを鑑賞しながら観客も違和感を感じながら、"これってマトリックスなんかじゃない、失敗作だ"と思わなかったでしょうか?
これが監督の意図であり、仮想現実空間への違和感を感じる人々を、観客へ投入させるコードとして映像にしたもので、我々はまんまとハマるのです。

おそらく8番目の仮想現実を構築した世界の事なので、別視点になるのも当然かと思います。
死んだはずのネオとトリニティーは雰囲気が違う(年齢を重ねた配役)表現で、スミスは別の役者へシフトしていて、モーフィアスに至っては人間ですらありません。
しかし、ラストシーンまで鑑賞すればこれらが辻褄合わせと言ってしまえばそれまでですが、うまく理由にまとめているのは、製作サイドの都合を含めた問題点としてよく消化されたと思います。
スミス役のヒューゴ・ウィーヴィングだけは、撮影スケジュールの都合らしく、何にでもなれる何処にでもいるという存在から、誰が演じてもよい存在ですが、あの強烈なインパクトで三部作を演じきった存在感が、新作に活かされなかったのは残念ですが。

モーフィアスは、人間として60年の月日から死んでしまっており、モーダルでエージェントとして作成されたモーフィアス2が、違う役者でキャスティングするのは監督の構想通りらしいので、似ている役者を起用している点からも、それを知ると違和感が少なくなりますね。
そして作ったのはリブートされたネオであるトーマス・アンダーソンなので、別人としてプログラムされているのも納得。

作品については、他のファン方が考察サイトを立ち上げているので、まだ1度きりの鑑賞である私はファーストインプレッションでしか掴めていない感想として書く程度。
内容解説などはそちらにお任せして、私も読んでいこうかと思っております。

今作では、ラストシーンでトリニティーが覚醒をしてネオを引っ張る象徴的なキャラクターとなっておりますが、男性優位社会への抵抗を感じる女性となったラナ・ウォシャウスキー自身を表しているのだと感じます。
そして、再三のワーナー・ブラザース社からの金の為だけの続編製作から、別監督を起用しての作品レ●プを敬遠した思惑から製作されたような話もあることから、エンディングに監督の代弁のような寸劇で締めているのに現れております。

個人的には、新しくリブートされた世界として、続編というよりはスピンオフのような立ち位置で鑑賞しておりましたので、それなりには楽しめました。

トリニティーが死んで、ネオがマシンシティで犠牲となって人類への自由を約束させた世界。
そこでは、プラグから解放されたい人類には好きにさせたマシン側ですが、おそらく予想を超えた人数が"アイオ"へ旅立って不可侵条約のようなもので守られてしまうことで、マシンシティが電力不足を起こして、ナイオビが見たようなマシン同士の戦争になり、中には人類へ加担する勢力も出でくるというサブストーリーが、なかなかよく練り込まれておりました。
これはスピンオフである「アニマトリックス」を鑑賞していると、人類とマシンの戦争過程でも説明されており、より理解して鑑賞できると思います。

この結果、ネオが持つ強力な電気供給力に目をつけたマシンは、仮想現実へ繋ぎ止める為にトリニティーをも蘇らせて、二人を微妙な距離感でループさせた安定電力を構築させたのだと思われます。
どうやって蘇らせたのかは想像つかず、他の方の考察では巻き戻しによりネオとスミスの戦いを回避させて、死ぬことがなかった世界にしたとあり、なるほどと納得。
結局、ネオとトリニティーは電力の為の仮想現実を彷徨う羽目になり、それを構築したアナリストにパンチをお見舞いして終わります。

体制へ反旗を翻る大衆という構図で、前作トリロジーでは体制と大衆が譲歩した構図とは全く違う、現代へのメッセージとして込められているのでしょうか。

まさかの続編があるような、謎の伏線もチラホラ見えて、早く撮影しないと役者が居なくなる不安を込めて、4点を付けさせていただきました!
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