ましゅー

マザーレス・ブルックリンのましゅーのレビュー・感想・評価

マザーレス・ブルックリン(2019年製作の映画)
3.9
三連休最後の鑑賞です。
(今朝未明にも自宅で一本鑑賞済みですがそれはまた後程。)
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海外アカウントをフォローしていると、いち早くハリウッドの作品情報が舞い込んできますが、これもその一つ。

あのエドワード・ノートンが、製作・監督・シナリオ(原作小説の脚本化)・主演までをこなしたアメリカンノワールという事で昨秋から期待していた作品がようやく日本公開となり、都心から離れた自宅からさらにまたわざわざ奥地まで行って参りました。
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……いや、期待以上の作品でしたよ、これは。

ストーリー:
1957年、ニューヨーク。
障害の発作に苦しみながらも驚異の記憶力を持つ私探偵のライオネルは、人生の恩人であり唯一の友人でもあるボスのフランクが殺害された事件の真相を追い始める。

ウイスキーの香りが漂うハーレムのジャズ・クラブからマイノリティの人々が集うブルックリンのスラム街まで、僅かな手掛かりを頼りに天性の勘と抜群の行動力を駆使して大都会の固く閉ざされた闇に迫っていく。
やがて、腐敗した街で最も危険な黒幕に辿り着くが…(公式HPより引用)
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派手なアクションはもちろん、銃撃戦などもないですが、NY市が自ら行う不当なスラム街の買収・公園化に抵抗する市民団体に迫る見えない危機、暗躍する謎の男達、ほぼ一人でその裏取りに血道をあげるライオネル等の描写にまとわりつく、静かな緊張感・緊迫感がとにかく尋常ではないレベル。
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それらがオールドスタイルのジャズが中心となった劇伴をバックに丁寧に描かれる様は、決してバキバキのスタイリッシュさはないですが、近年まれにみる「格好よさ」に満ちています。
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一切メモを取らない調査スタイルなるも、障害のためか超人的な記憶力で話された言葉・記された文字を全て頭に刻み込み、まるでパズルのようにそれらが組み合わさってある回答を導きだす過程の演出もとても刺激的。
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ついに事の真相に行き当たった時の衝撃も、ひょっとすると現代の我々の住むこの日本にも通じるかも知れない、決定的で深刻な体制の腐敗とモラルの欠如(政治レベルでも個人レベルでも)がなんともやるせない気持ちにさせつつ

僅かに残る温かみを伴う幕切れが、絶望の淵から救ってくれる絶妙のエンディングでありました。
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うん。俳優としてもその才能を余すところなく見せてくれていたエドワード・ノートンでしたが、制作者の立場でも極めて非凡であることを見せつけられた思いです。

また彼が新たな作品を創る事があるならば、また首を長くして期待して待ちたい。

そう思わせてくれる、とても良質の映画であった事は間違いありません。
ましゅー

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