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街の上でのsoのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
3.5
姪っ子に本気で恋する警官、結婚してる男にばかり惹かれてしまう女、苦悩もせず小説を書き上げて今は俳優を目指す男、好きな男に2番目宣言をされてもそれでも付き合う女。
ズレてる、ズレてる、登場人物どいつもこいつも全員ズレてる!
でもそういうズレてる人を受け入れてくれる街こそが下北沢だったんだ。
そしてまさにそれこそ自分が下北沢とそこに生きる人々のことがいまいち好きになれない理由だったのだと合点がいく。ズレてる人同士が互いを肯定し合って生きている様な空気がとても不健全に感じられたのだ。
そんなことを思いながらも、この映画に登場するズレてる人達を一人一人見ていくうちに、反発だけではなく、彼らのズレにどことなく惹かれている自分にも気づく。
映画の中で、死んでしまった古本屋店主を思い出すときに「あいつ寝てばっかりいたなぁ」とか「しょうもなかったなぁ」と知人同士で言い合うその口ぶりは、そのズレが何とも愛おしいものだったかのような口ぶりだった。
あぁ身近な人がいなくなって真っ先に思い出されるのはその人のズレてる部分なのかもしれないなぁと思った途端、下北沢という街とその上を行き交う人々に何とも言えない哀愁が感じられたのだ。
この映画が、体は下北沢にどっぷり浸かっていながら心までは浸りきれない主人公青君が、自分のズレを受け入れていく物語であることに、鑑賞後しばらく経ってから思い当たった。
後半にかけてドラマチックなシーンがあったり、象徴的なセリフがふっと登場したり、一筋縄ではいかない様々なテーマを内包した映画だと思うが、下北沢・ズレという視点で改めて全登場人物を見回したときに初めて自分の中でとても腑に落ちるものがあった。ズレを受け入れたからこそ、あの歌が歌われる。

今まで今泉監督作で見てきたような、「観察力えげつないな、、」と漏らしてしまいそうな程の絶妙な「あるある」な言動、「いるいる」な人物造形は影をひそめ、代わりに冴えない男の周りに美女が群がるという村上春樹的妄想ファンタジーが頭をもたげ出した。これはいけない。
とはいえ前述した様に、様々な見方で楽しめる、豊富なテーマを含んだ映画だと思うし、今後の作品も観たいと思える監督であることは変わらない。
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