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街の上でのkoyaのレビュー・感想・評価

街の上で(2019年製作の映画)
4.0
主人公、青くんの日常を映画にした感じで特に劇的な事は起こりません。
日常を映画にするって逆に難しいかも。

映画は青くんが彼女から別れ話を持ちかけられる所から始まります。
この映画の男の人たちは恋愛だけでなく何かと未練たらしいのがなんか笑えます。
逆に女の人たちは、さばさばと割り切ってる。

綺麗ごと言っても男女がつきあって別れるとなるとそこは泥沼になる訳で映画は淡々と2人の痴話げんかを映します。
あるある、こんな話......というリアルというよりリアリティー満載の映画で、下北沢を全面ロケしたという点でも今の下北沢のリアリティを追及しているのかもしれません。

私の知っている下北沢は30年以上昔。
本多劇場ができたころで、演劇の、若者の、カルチャーの街でした。
アングラ演劇や学生演劇が盛んで、小さい所だとスズナリなど小劇場がたくさんあり、演劇青年たちがたむろしていました。

映画ではまだまだその名残を残したライブハウスやバー、古着屋、古本屋などが出てきます。
主人公の青くん(若葉竜也)も古着屋で仕事をしています。
吉祥寺のようなデートの街ではなく、ちょっとアングラなカルチャーの街。

そこでの若者たちのあれこれですが、なんとなくぼそぼそと話ているような会話が続きますが不思議と退屈しない。

ここに出てくる青年たちは明るくもないけれど暗くもない、どちらかというと世界の片隅で生きているような人々です。
学生が卒業制作の映画を作りたいから出てくれないか、と言われますが、映画を作る若者たちの生意気さがなつかしいというか、こそばゆいというか。
打ち上げやるために映画作ってるの?ってツッコミたくなるようなノリ、なつかしいです。

ただ青くんはそこにはなじめない。友達が少ないと自分でも言っていますが、大勢で群れて騒ぐのは好きじゃない、おとなしい青年です。
古着屋のカウンターでいつも本を読んでいて、将来出世しようとか、金持になろうとかそんなことは思っていない。

ただ毎日をなんとなく過ごしているようですが、それは若さの特権なのかもしれません。
年を取ってくると映画や演劇よりも、生活だったり家族だったりお金だったりが重く背中にのしかかってくる。

そうなる寸前のまだ身の軽い若者たちの一瞬をとらえた映画。
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