great兄やん

アフター・ヤンのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

アフター・ヤン(2021年製作の映画)
4.1
【一言で言うと】
「“繋がり”を持たぬ者たち」

[あらすじ]
人型ロボットが一般家庭に普及した近未来。茶葉の販売店を経営するジェイクは、妻のカイラ、中国系の養女ミカ、ロボットのヤンと共に暮らしていた。だが、ある日ヤンが故障して突然動かなくなってしまう。何とか彼を修理しようとする中で、ジェイクはヤンの体内に定期的に数秒間の動画を記録する特殊なパーツが組み込まれていることを知る...。

メチャクチャ良い!!…とまではならないんだけど、静かにじんわりと良さが溢れてくるとても心地良い作品でした😊

小津安二郎マニアで知られるコゴナダ監督ですが、確かに“家族”にこだわるシーンが随所に点在していましたし、家族の“形”とはどうあるべきなのか?という問いに対して格別な詩的表現で表すあの独自性に終始釘付けになってしまうほど。

まぁ自分も小津安二郎は知ってるとはいえ、『東京物語』しか観たことないんですけどね(^◇^;)...

前作『コロンバス』では非説明的な要素にあまり馴染めなかった故、その作品に宿る“良さ”というのを見出せなかったのだが、今作に限ってはその要素が上手くSFとマッチしており、なおかつ説明的でない“寡黙さ”がより一層問いかけへの“深み”を増していたのではと思います🤔

それになんと言ってもオープニングのクセの強さよ笑笑。コゴナダ流エンタメ性のアプローチかの如く独特かつ珍妙な幕開けで、ある意味一番面食らいましたね。意外すぎて😅
家族の団欒がアレって...監督も妙な発想を思い浮かべますよね〜( ̄▽ ̄;)

それからA24ならではの特徴的な画角や色彩豊かな映像美も圧巻ですし、坂本龍一先生の生み出す音楽も今作との“色合い”を完璧に調和しており、ただただ観ていて癒される気分だった。
普通こんな映画疲れてなくとも寝てしまいそう…という不安がなきにしもあらずですが、不思議とそうは感じなかったのは、今作の持つ様々な要素が上手く両立して描けていたからだと思いましたね😌...

とにかくヤンというAIが見た“世界”は我々に何を残してくれていたのか、AIと人間の違い、そして血筋や家族など、それぞれの“違い”を優しく受け入れてくれる素敵な一本でした。

本当の家族を知らないミカに対しヤンが中国古来に伝わる“接木”の成り立ちを伝えるシーンで、その接木の概念がミカだけでなくジェイクやカイラ、そしてヤンにへと“繋がり”を持たせる展開の巧さに唸りましたし、“養子”を接木というメタファーで世間一般での家族の違いを受け流すという優しさ。まさにお見事としか言いようがない(゚o゚;;...

家族の在り方に対し独特かつ的確に捉えた今作。全体的に染み渡る造詣の深さもですし、押し付けがましさのない“マイノリティ”の描写が何よりも懐の深さを感じれて好きでしたね〜...